第五十七話 占

 

仙田監督「やばいな。」
10回表の攻撃にとりかかろうとしたとき、仙田監督がつぶやいたのに峯川が気付いた。
峯川「何がですか?」
仙田監督「川崎だ。そろそろスタミナの限界だろう。この回で終わらせたほうが・・・いいだろう。」
ほかのピッチャーには悪いが仙田監督はほかのピッチャーを出したがらない。
仙田監督「まあいい。とっとといってこい。」
峯川「へーい。」
アナウンス「1番、ショート、峯川君」
峯川「しゃあないですな。しかし森谷を攻略するにはナックルの攻略が絶対必要。ま、難しいこと考えずにいきますか。」
仙田監督(ナックルは結構、体力を使う球だ。多分、森谷の体力はそろそろ限界だろう。しかし気になるのは・・・)
「キーン!」
峯川が森谷のストレートをセンター方向へ打った。峯川は一気に二塁へ。これでノーアウト二塁だ。

2番、俺はスライダーをバントで峯川を進塁させた。
アナウンス「3番、セカンド、占」
占は重い足取りで打席に向かった。

森谷「占か。お前、とっとと打てよ。俺が退屈するじゃねえか。それとも、俺が怖いか?」
森谷は占だけに聞こえるような声で言った。
占「・・・」
森谷「一人じゃ何もできんだろ。」

仙田監督「気になるのは占だ。占は三振ばかり。何かあるに違いないな。」
斉藤君「お前はこの戦いで何を感じた?俺との戦いで何を思ったのだ?お前のすべてをぶつけてみよ。この俺になぁ!」
仙田監督「斉藤、はやくネクストバッターズサークルにつけ。」
斉藤君「はーい。」
俺「今のはなんだったんだ?」
仙田監督「いいか?占。自分を信じろ。昔にとらわれるな。・・・いけ。」
仙田監督は占に向かって叫んだ。
占「でも・・・」
斉藤君「ま、俺がついてるって。」
俺はとっさに思いついたことを叫んだ。意味は分からない。ほかの人が聞いたら「なに言ってるんだ?」と思われるだろう。と言うか俺自身なんでこんなことを言ったのか分からない。
俺「占、俺らは友達だよなぁ。な。」
占は少し変な顔をしたが、すぐに言った。
占「う、うん。そうだよね。うん。そうなの?」
俺「友だよな。俺たち。」
斉藤君「ま、俺も友達だ。占のな。それだけは間違いないぜ。」
仙田監督「だから斉藤はとっととネクストバッターズサークルにつけ!いつまでいる気だ?」
斉藤君「はーい。」
仙田監督「お前は一人じゃないぞ、占。それだけは分かっておけ。」
どうやら仙田監督は占の調子が悪い原因が分かっているようだ。
占「うん、うん、うん。わかりました。いってきまーす!森谷、もう僕は一人じゃない。仲間がいる。だよね。」
俺「そのとおりだぜ!」
俺は叫んだ。
ほかのチームメイト「おおーっ!」
森谷「フン、俺のナックルで三振だ。」
ナックル、かなりの魔球だ。ナックルは誰も打っていない。しかし今の占なら打てるような気がする。いや、絶対打てる!
占「打ってやるよ!」
「ビュッ!」
「ククッ!」
「カキーン!」
第一球、カーブ気味のナックルを占が完璧に捕らえた!
森谷「な、なに!」
占「やったー!」
打球はセンター方向一直線!これは完璧に入ったな。

30分後
5対3、占がホームランを打ち、勝ち越し。(続く斉藤君は三振だった。)10回裏は俺が完璧に抑えて及川高校が勝利した。
俺「占、何で調子悪かったんだ?」
俺は試合が終わった後聞いてみた。
占「実はね、僕、昔からいじめられててね、友達ができなかったんだ。で、そのいじめのリーダーが」
俺「あの森谷とかいうやつか?」
占「うん。だから昔の恐怖心とか、そういうのが邪魔して打てなかったんだと思う。でも・・・」
俺「俺たちがついてるからな。あ・・・」
そこには森谷が立っていた。
森谷「占・・・すまんかったな。昔は・・・いじめなんてな・・・」
占「うん、気にしてないよ。」
森谷「そうか!?占、応援してるからな。頑張れよな。」
占「うん。それじゃ!」

こうして俺たちは甲子園第一回戦を勝利で飾ったのだった。しかしこの喜びもつかの間のものだということに俺たちは気付く余地もなかった。

宿舎
俺「わーいわーい!勝利だ勝利だ!」
峯川「これで優勝に一歩近づいたわけですな。」
宿舎はもう宴会ムードだ。
「ガチャッ!」
友子「みんなー・・・相手が決まったよー・・・」
友子が暗い顔をして入ってきた。
俺「なんだよ、友子。暗いなぁ。勝ったんだからパーッと行こうぜ!パーッと!」
友子「次の対戦相手、竜王高校。」
みんながいっせいに静まり返った。
俺「そうか、竜王高校か。・・・ってなにぃ!?竜王高校!?あの竜王高校!?・・・はぁ。」
俺は暗い気持ちになった。それはほかの人らも同じだろう。ただ一人を除いて・・・
占「はあ。荷物まとめよう・・・」
峯川「帰りも歩きかな・・・」
斉藤君「みんな暗いねぇ!いいじゃねえか、竜王高校。この天才、斉藤様にはそれぐらいの力があるほうがいいねぇ。」
俺「斉藤君はプラス思考でいいなぁ。」

 

 

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