バタ西のファイアーウォール



ここは川端西高校、通称バタ西のグラウンド。今日も空は青い。
隣の県から引っ越してきて一ヶ月、ここの高校に入って2週間。そしてこの野球部に仮入部して1週間がすぎようとしていた。
「(今までに甲子園出場は無いみたいだけどレベルはそこそこ高いみたいだな。そう簡単にはレギュラーにはなれそうも無いかな。まあがんばろう。)」
南条圭治(なんじょう・けいじ)はトンボをかけながらあたりを見渡していた。



ふと、キャッチボールをしている1組に目がとまった。
一人はメガネをかけている、どちらかと言えば文科系のクラブににいそうな顔をしたちょっと小さめの男。その男がボールを投げてもう一人が受ける・・・・・ん?なんで後ろを向いてるんだ?・・・・・背面キャッチ!?

そしてもう一人の男はキャッチしたボールを今度はグラブトスした。結構飛んでるな・・・・・ってそうじゃないそうじゃない、南条は思わず注意してしまった。
「おいおい、まじめにやらないと先輩に怒られるぞ」
それを聞いて、メガネの男もグラブトスの男に言った。
「ほら怒られたじゃないか。きちんと返せってさっきからいってるだろ」
「ああ、二人ともそりゃどうもすんませんでした。・・・・・ちょっとぐらいええやんか」
『ちょっとぐらい』じゃなかっただろ・・・・・南条はそう思って立ち去ろうとしたとき、グラブトスの男が声をかけてきた。


「ちょっとちょっと、そういやお前なんて名前や?」
「ん?俺か。
南条だ」
「ふーん。聞かん名前やな。南条、か・・・・・よっしゃ、これからお前のことは『ジョー』と呼ばせてもらうで」
・・・・・・って早いな・・・勝手に決めるなよ
「何で早速人のあだな決めてるんだよ。しかも自分が名乗る前に」
メガネの男が言った。

「そやな。たしかにそらあかんかった。俺の名前は
新月や。そしてコイツが刈田。人呼んで『バタ西のファイアーウォール』
「・・・・・誰も呼んでないだろ・・・・・と言うかおととい知り合ったばっかりだし・・・・・」
刈田が的確(?)なつっこみを入れた。知り合って3日にしてはなかなか息があってるな。


「それはさておきジョー、お前どこのポジションなん?」
もう普通にあだ名で呼んでるし・・・・・・
「一応
サードかな。まあ内野ならどこでも」
「どこでも、か。残念やけどサードだけやな。なんせ二遊間はこの俺たち、人呼んで・・・・・・」
「だから誰も呼んでないって。とにかく南条、ポジションかぶらなくてよかったな。」

「お、でも全員内野、ってことはこのメンバーだけで三角地帯ができるやんか。名前は・・・・・」
「バタ西トライアングル、なんてどうだ?」
南条はちょっと新月のノリにあわせてみた、が

「うーん・・・・・いまいちやな。語呂が悪い」
ファイアーウォール、だって十分悪いよ・・・・・・・・
「バタ西デルタ。うん、これやな。決定!」
・・・・・まあさっきよりは確かに語呂良いけど・・・・・・


「さ、こんなやつはほっといて。お互い、2年後のレギュラー目指してがんばろうぜ。」

まともに意見した刈田にたいして、新月はこんなことを言った。
「2年後?甘い甘い。お前ここの高校の事あんま知らんやろ。去年バタ西はな、1、2年生だけで地方ベスト4いったんやで。あの監督は結構下級生でも使ってきよるからな。だから今でも十分俺たちにチャンスはあるってことや」

そして新月は自信満々にこう言い放った。
「ま、要するにおれのレギュラー入りはもう決まってる、ってわけやな」
いやいやそんなこたないだろ・・・・・・でも可能性が無いとも言い切れないか。
とにかくこれからの野球部生活、思ったより楽しいかもしれない。



3人は再びキャッチボールを始めた。

 

 

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