出陣

 

 

「さて、これまでいろいろと練習したやろうけど、今日が運命の日や。・・・そやけど発表する前に一つ言っておく。今日1ケタの番号をもらってもあくまでも現時点でそう決まっとるだけや。・・・・出場選手を決めるのは試合当日。それを肝に銘じておけ。」
いつになく厳しい表情で角田監督が話し始めた。

場に緊張が走る。

ついにレギュラー、そしてベンチ入りメンバー発表。
俺たち一年がスタメンってことはありえないけどベンチメンバーに何とかもぐりこめたら・・・まあ無理か。
「みんな早よ言え、って顔しとるな。まあそうあせるな。・・・・・基準としては、数ヶ月間見てきたお前らの力、それをワシの戦力構想に合わせて悩みに悩みぬいた上でメンバーを決めた。一芸に秀でたものがはいっとる、と言うこともあるからな。期待しとけよ。」

「角田監督はな、プロみたいな采配をすることで有名なんだ」
「え?」
突然角屋さんが言った。
「代走とか守備固めとかな。なかなかシビアな采配をしてくるぞ。高校であれはなかなかない。・・・・・信頼関係がきちっとしてる証拠だ。」
よくわからないがとにかくそれが監督の「戦力構想」なんだろう。


「前置きは長くなったが・・・・・では発表する


    
1番  木田                  」


一年生のうち数人が驚いた顔をしていた。たぶんこいつらも去年の新聞をチェックしてなかったか、バタ西の野球に興味がなかったんだろう。知らなかったのは俺たち3人だけじゃない、と言うことを知って少し安心した。

2番  荒川 
3番 辺山 
4番 芦原 
5番 谷嶋


谷嶋さんはサードか。いくら球が軽いって言っても、やっぱりあの肩は桁違いなんだろうな。バッティングもいいし。

6番  浅越 
7番 角屋
8番 島田
9番 須藤

    
以上が暫定でのスタメンや。」

2年生から二人スタメンに入った。意外と島田さんが大喜びしている。・・・・・
おいおい、「余裕」やないんかいな・・・・・・

「続いてベンチ。
 10番  中津川
 11番  藤谷
    ・
    ・
    ・
 14番  新月
    ・
    ・
    ・
 17番  刈田
 18番  南条       

これで発表は終わり。後は各自試合に向けて練習せぇ。解散!」
「え!うそ!?」
「おお!入ったで!よっしゃ!」
「まさか入るとは・・・・18人枠様様だな」

そうか。そういえば最近ベンチ入りが18人までいけるようになったんだっけ。とにかく奇跡だ。信じられない。


「ま、三人ともそれぞれ一つ武器を持ってるからな」
「あ、木田さん」
3人同時に声を上げた。
「新月は足、刈田は守備、南条は左打ちで強肩。監督がどう使ってくるかはわからんが・・・・・とにかく試合当日まで気を抜くなよ」

「そういえば木田さん、1番獲得おめでとうございます。」
「俺達全く知らなくて・・・・・」
「4月から全く昼間のグラウンドで投げてなかったからな。当然だろう。もうずーっっと走りっぱなし。監督に言われてな。」
「え?ずっと走りっぱなし?試合に間に合うんですか?」

「あと9日か・・・・・ま、いけるいける。いままで走ってきたから何とかなるって。ちょっと今から軽く投げ込みするから見てみるか?」
「は、はい」


いよいよ木田さんの力が明かされる。バタ西の左腕エース、いったいどんな球を投げるんだろう。3人は目を輝かせていた。

 

 

 

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