体育科の面々

 

_______________7月19日 第一回戦______________


ついに始まる。第86回全国高校野球選手権新島県大会。
開会式を終えた翌日の初戦に、バタ西こと川端西高校の戦いが始まる。

相手は南海大学付属沢見高校・・・・・・・・聞いたことないな・・・・・・



「今日当たる高校ってどんな高校なんだ?」
南条は、自称情報戦の申し子(と言っても、木田さんの存在を知らなかったのでその株はガクンと下がっている)、刈田にたずねてみた。

「今年できたらしい。でも「体育科」があるから・・・・・たぶん今日戦う相手はスポーツ推薦で集められた選手ばっかりだろうね。その辺は藤谷さんが詳しいはず・・・・」
「そうです。主に関西地方から有力な中学生を集めたみたいですね。」


藤谷さんが後ろから言った。
「あの高校は5日前に偵察しましたが・・・・・・」
5日前?・・・・5日前・・・・・あっ!

「藤谷さん、あの日休んでましたけどまさかそのために?」
「そりゃそうだよ。何もなくて試合前に休むわけないだろ。俺も他に行ってたぞ」
「無断で行ったから帰った後監督にたっぷりしぼられましたけどね。」
「あの監督妙にガンコなところがあって、偵察とか嫌いなんだよなぁ・・・・・」
そうか。二人ともサボってたわけでは無いんだな。・・・・・・・・当たり前か。

「で、付属沢見の力はどうなんです?」
「まあ・・・・・見てからのお楽しみです」

藤谷さんは、三番手控えピッチャー中津川さんの球を受けに行った。
「あの人、ああいう引っ張り多いな・・・・・・」
「でも確かに戦ってみないとわからないよな。」
二人も体をほぐしに行った。





「・・・・・ん?あれは!」
新月は相手高校の練習風景を見て驚いた。・・・・知っとるやつ多いなぁ・・・・
そのまま突っ立って見つめていると、付属沢見の一人が新月に気づいた。

「おい!新月!」
「お!お前は・・・弓射(ゆみうち)か」
実は新月が大阪にいた頃、弓射はシニアでのチームメイトだった。
よく知っとることは知っとるんやけど・・・正直コイツは苦手や。

「久しぶりやな。何やお前、なんでこんなところでやっとんねん」
「は?」
「こんなそこらの公立で・・・お前やったらもっとええとこ行けるやろ・・・あっ、そうか、無理やったか、ごめんごめん」

「何やねんなお前は、ケンカ売っとんのか」
「それにしても「川端西高校」って・・・・全く聞いたことないなぁ。まあ今日はコールドさせてもらいますわ。こんなショボくれた地方の、それも甲子園にも出た事ないようなところにうちの推薦たちの相手させんのも、かわいそうな話やけどな」
「くっ!」
こいつしばいたろか。そうも思ったが、試合前に問題を起こすのはよくない。

「・・・・・2年前の借り、返させてもらうで」
耳元でボソッとささやいて、弓射は去っていった。背中には、背番号「1」がついていた。
エースになったんか、それで天狗に、ってのもあるかもな。

しかしあいつは自分の自慢をするのも腹立つねんけど、チームの看板を振りかざすのが一番ムカつくわ。昔からそうや。ああくそ!
・・・・・まあええ、絶対勝ったんねん。ボッコボコにしたる。





「じゃあそういうことで・・・・・今日のスタメンを言うぞ!

 島田 
 浅越
 辺山
 谷嶋
 芦原
 角屋
 須藤
 荒川
 木田

さ、もうすぐプレーボールや。気ぃ締めていけ!!」
「はい!!!」
選手たちはベンチから飛び出して、整列しあいさつした。いよいよだ。




先攻はバタ西高校。相手ピッチャーがマウンドで投球練習を始めた。
「・・・・・意外とたいした事ないな。」
南条は思わずつぶやいた。
「そうだな、スピードも谷嶋さんの方がずっと速いし」
刈田も同意した。と言っても俺には打てなさそうだけど・・・・・

「最高時速はこの前計った時点で134キロです。1年生にしてはすごいですね」
それにしても藤谷さん、相手グラウンドでよく測れたな・・・・・

「ま、所詮は、一年にしては、だ。相手がいくら推薦だといっても、俺たちはあいつらより長く野球をやってるんだ。・・・・・・格の違いを見せ付けてやろうぜ。」
キャプテンはいつになく興奮している。

「そや!絶対勝って下さいよ!死ぬ気でやってもうてください!」
なぜか新月はもっと興奮していた。・・・・・なにがあったんだろう。
「よし!ピッチャーもういいみたいだ。行こうぜ!・・・Let's GO!バタ西!」
「おぅ!!!!」
ちょっとダサい掛け声だな、と思いつつ円陣を組んで気合を入れた。



島田さんが左バッターボックスに入る。本人の希望通り一番センター。
すごく気合が入っている。力みすぎて大振りしないように・・・・・・

「プレーボール!!」
相手ピッチャー、弓射が振りかぶった。

 

 

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