団円

「な、なんやいきなり・・・・・」
後ろから声をかけられたので、新月は少し驚いてしまった。


言いづらそうにしばし沈黙した後、弓射は口を開いた。
「・・・・・・・・さっきはわけのわからんこと言ってしまってすまんかったな。ほんまに。調子に乗りすぎた・・・」
「試合前のか？・・・ええよええよ。反省すれば。」

ここはとりあえず許しておくことにした。追い討ちをかけても仕方がない。

「そうか。ほんまごめんな・・・・・うちの高校が負けたのは、力の差もあるけど・・・・・たぶんああいう傲慢な気持ちがあったからやと思う。いや、他のやつらのことはようわからんねんけど・・・・・・・少なくとも俺は思い上がってた。推薦で付属沢見に入って、それですっかり安心してもうて・・・・・練習も足りんかったんやろうな、たぶん・・・・・」
弓射はうつむきながらこう語った。・・・・・・あ、そういえば・・・


「やっぱりそうか。確かにお前、足腰が安定してなかったよな。」
「え？」
「いや、正確には俺が言うたんちゃうけどな。木田さんが『あのピッチャー、走り込みが足りないんじゃないか？』とかなんとか言うてて・・・・・・どなんや、実際？」
「・・・・その通り、やと思う。」

「結構変化球ばっかり練習してたんちゃう？」
「え？なんでわかるんや？」
「あのフォーク、よう落ちてたからな。」
「・・・お前、打ててなかったもんな、フォーク」
「なに？ちゃんとヒットにしとったやないか」
「あんなもんボテボテや、ボテボテ。もういっぺん言うけどあれは俺の勝ちや」
「いやいや、勝負は結果が全て。つーことでお前は負けたの！わかるか？」
「なにを！」


言い争ってはいたが、試合前のような険悪なムードはもう流れない。
試合を通じて、2人も少し分かり合えたようだ。よかったよかった。



「おーい！！新月！！いつまでそこにいるんだ！？置いてくぞ！！」
「・・・あ、浅越さんが呼んどる。・・・じゃあまたな」
「おう。次もお前だけは抑えたるからな。いや、お前だけじゃなくて川端西高校も完封やからな！覚えとけ！」

「はいはい。まあがんばって練習しろよ。・・・てかレギュラー落ちすんなよ」
「せえへんわ！なめとんのか！」

２人はよきライバルとなるだろうか。なって欲しいところだ。
新月は、球場の外へと向かっていった。

第二章メニューに戻る

小説メニューに戻る

ホームに戻る