長すぎる指、くしゃみ

 

____________7月20日 昼 新島県民球場_____________



昨日の勝利に気をよくした監督に、あっさり偵察を許可してもらった。
そうそう、やっぱり野球は情報戦。・・・・・ってこれ偵察と言うか当たり前のことだよな・・・・・いちいち許可もらわなくてよかったんじゃ・・・・・

刈田はグラウンドで試合を観戦していた。
今日試合をやっているところと当たるのはまだまだ先だが、一応見ておいて損は無い。スコアをつけながら観察する。


と、そこに、上から液体が降ってきた。

「ビシャッ!」
「うわっ!」
「あっ!!すいません!!」
ジュースをこぼされた・・・・・・あーあ、せっかくつけていたスコアの紙がびしょぬれだ。・・・・・・・まあまだ1回表だから被害は割と少ないけど・・・・・・

「本当にすいません!!ああどうしよう・・・・・」
何はともあれとりあえず拭かないと。刈田はポケットを探ってみた・・・・・
「・・・あの・・・ハンカチ持ってますか?今日俺持ってきてなくて・・・」
「あ、ありますよ。もうどんどん使ってください。というかもらってください!」
「いやそれは・・・・・」
「いやいやいいんですよ。もうほんとに。」


ジュースをこぼしてしまった人がハンカチを差し出してきた・・・・・ん!なんだこの指!?異様に長い!?
いやこんなの俺いままで見たこと無いぞ・・・・・刈田は思わず言葉を失った。
指の長い人を見上げてみた・・・・・しかし特別背が高いわけではない。170ちょっとぐらいだろう。・・・・の割には長すぎるぞ・・・

「あれ?どうしたんですか?」
あっけにとられていた刈田をさすがに不審に思ったのか、指の長い人は尋ねてきた。
「いやあの・・・・・・・・すごく長い指ですね・・・・・・・」

「ああ、これですか、生まれつき長いんですよ。気持ち悪いでしょう?でもこの指、意外と役に立つんですよ。とくに・・・」
「特に?」
「・・・・・あ!連れが呼んでるので失礼します。本当にすいませんでした」


指の長い人は去って行った。・・・・・・・災難だったな・・・・・・・さ、気を取り直して試合観戦を続けよう。



__________7月20日 夕方 川端西高校__________



「ヘックショイッ!・・・・ぇぃちくしょう!」
着替えていた南条の隣で、木田さんが大きくくしゃみをした。それにしてもその後でちくしょうとか言うあたり、やっぱりなんか老けてるな・・・・・・・・

「木田さん、カゼですか?」
「ああ、そうみたいだな。うん。」
「いや、そうみたいだ、って・・・・・明日試合ですよ?」
「まあ何とかなるだろ。熱も38度しかないし。」
「なんだ、よかっ・・・・・ってよくないですよ!38度!?」

「なにを驚いてるんだ。たいしたこと無いって。と言ってもさすがに39度超えたらきついからな。そん時は谷嶋にでも代わってもらうよ。」
「・・・・・・大丈夫ですかね?・・・・・」
「いくら主戦投手じゃないっつっても、あいつの球はそこらのやつじゃ打てんよ。明日当たる高校はどこだったっけ?」


明日当たる高校は・・・・・宗川工業か・・・・・・まあたぶんいけるとは思うけど・・・・

 

 

 

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