快進撃

 

______________7月21日 第2回戦________________


県予選第2回戦。相手は宗川工業高校。昨年は1回戦敗退。
今年は勝ち進んだようだが、そんなに警戒すべき相手では無いだろう。
木田さんのカゼもそんなにはひどくならず (と本人は言っているが、まだ37.8度あるそうだ。なんてタフなんだろう・・・)、今日も投げられるらしい。


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試合終了。11−2。7回コールド。
さすがに病み上がりなので (上がってない気もするけど・・・)、木田さんは球速が出ず制球も今ひとつだった。その影響で4回、2つの四球とエラー、ヒットで2点を加えられた。
だがチェンジアップを有効に使い、その後は得点させなかった。

打線は、谷嶋さんが2本塁打5得点と大暴れ。
1年生では新月が代走として出場し、またまた1盗塁を決めた。あの足は高校野球でも十分通用している。


川端西高校は無難に2回戦を勝ち進んだ。




_______________7月25日 第3回戦_______________




「軒峰(のきみね)高校か・・・・・なんでこんなところが勝ち進んでるんだろう?去年は1回戦でコールド敗退だよな・・・」
「さあ?・・・・よっぽどくじ運がよかったんだろうな・・・・・」
3年生の二人、芦原さんと須藤さんはしきりに首をひねっていた。


そこへ刈田がおずおずと割り込んだ。
「あのすいません・・・・あの高校に結構いいピッチャーがいるみたいですよ。」
「へぇ。どんなピッチャーだ?」

「乾って言うピッチャーです。まだ2年生なんですけど、ここまでの2試合まだ得点を取られてないんです。それで競り勝つのが軒峰高校の勝ちパターンみたいです。」
「・・・2年生ピッチャーか・・・・・庄原の例もあるしなぁ・・・・・」
須藤さんは少し心配そうになった。庄原、か・・・・・去年ここの県大会で優勝した陽陵(ようりょう)学園のエースを2年生ながら務めていたピッチャーだ。


「確かにいいピッチャーですけど、去年の庄原ほどでは無いですよ。」
藤谷さんが付け加えた。
「それに軒峰は打線が弱いですから。ここまでの試合で合計3得点です。乾さえ攻略できれば十分勝てるでしょうね。」

「そうそう。ちゅうことで今日は先発は谷嶋で行くで。」
「あっ、監督!」
角田監督がいきなり後ろから現れた。いつもながら気配を消すの上手いなぁ・・・

「木田にはこれから無理させることになるやろからな。今日は休み。」
「で、サードはどうするんですか?」
「そやな・・・・・・ジョーでええか。」
「ええっ!!」
4人同時に驚いた。南条がスタメンか・・・いくらなんでも早くないかな・・・・
まあでも、あいつならいけるだろう、たぶん。


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乾は確かにバランスのよく取れた好投手ではあったが、勢いに乗っている川端西打線に対抗するにはまだ力不足だった。7−1。川端西高校は3回戦を突破した。

南条は7番に座った。3打数で1安打とまずまずの成績。谷嶋さんが7回からサードに入ったため、途中交代した。
今日の殊勲者は角屋さん。4打点を上げ勝利に貢献した。
途中で刈田が守備固めで出場。・・・・・それにしても高校野球で守備固めって・・・・・本当にあの監督は独特だな・・・・・


投げては谷嶋さんが6回無失点。制球、テンポともに安定した、いいピッチングだ
った。7回から9回までは2年生の中津川さんが登板し、1失点に抑えた。



___________7月26日 準々決勝______________


「しっかしバタ西高校、めっちゃ強いですね」
嬉々として新月は浅越さんに言った。
「うーんまあここまでは割りと楽に来れたが・・・・どうだろな。くじ運がよかったてのもあるしな。今日の新島籐陰(とういん)はそんなに簡単にはいかないぞ。去年は決勝まで進んだ高校だ。慎重に行かないとな。」

さすがキャプテン。ここまでの快進撃におぼれず冷静だ。


「ところで新月、この前の試合もそうだが・・・全く守備が上達してないな。」
「いや、そんなことはないっすよ・・・・・」
「そんなことがあるから言ってるんだ。大会が終わったら特守だ。」
「えっ!浅越さん大会終わったら引退じゃないんすか?」

「・・・・何を言ってるんだ。俺がそう簡単に野球を辞めると思うか?」
浅越さんの目がギラリと光った。・・・・・これは本気や・・・・・
「大会終わったら毎日グラウンドに来て鍛えてやるからな。覚悟しろよ。」

ええっ、毎日!?うそやん!・・・・せっかくあのノックから解放されると思ったのに・・・・・せっかく楽できると思ったのに・・・・・


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浅越さんの心配は杞憂に終わった。13−0。楽勝だった。
新島籐陰は目立ったミスが無く、ソツのない高校だったが、その分際立った選手もいなかった。
去年の勢いはすっかり失われたようだ。

打線は島田さんの特大本塁打、3回の打者一巡の連打など大爆発。

今日も角田監督は、例の「若手育成」を決行した。
試合前の浅越さんからの「大会終わったら特守」宣言にすっかり怖気づいた新月は、いつに無く慎重にショートを務めた。その結果華麗なプレーは無かったが、エラーは無くなり、併殺を取るなど「バタ西のファイアーウォール」も始めてまともに機能した。
浅越さんは満足そうだった。


今日はすっかり復調した木田さんが投げ、5回を1四球ノーヒットに抑えた。
ここまで打たれたヒットは第2回戦の3本だけ。すごいなぁ・・・・・・



準々決勝を突破し、今年もベスト4入り。ここからが、本当の勝負だ。

 

 

 

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