脅威のご近所高校

 

______________7月27日 準決勝______________


「ああ、やっぱり天城(あまぎ)が投げるのか・・・・・・厳しいな・・・・・」
「ここまで来るとさすがになかなか楽には勝たせてくれんな・・・・・・しかしよりにもよって去年と同じところと当たるとは・・・・・・天城も成長してるだろな・・・・・」
浅越さんと木田さんは渋い表情をして話し込んでいた。

今日は準決勝。去年バタ西はここで敗退した。
しかも今日の相手は、なんと去年と同じ川端高校。同じ市内にある、いわばご近所だ。そういう関係で、両チームにはお互い知りあい
の選手も多い。


「キャプテン!今日の相手はどうですか?いけそうですか?」
南条は、話しかけづらい雰囲気を出している浅越さんに思い切って聞いてみた。

「そうだな・・・まあ今年の勢いがあれば・・・・・いやでも厳しいかな・・・」
いつに無く弱気だ。慎重を通り越している。

「でも、川端高校って確か県内でも5本の指に入るぐらいの進学校ですよね。」
ここで刈田が割り込んできた。
「そうなのか?」

「え?知らなかったのか・・・・・あ、確かジョーは最近他のところから来たんだよな。まあいいや。・・・・・・・で、そんな高校相手に本当に厳しいんですか?」
「それがむちゃくちゃ強いから不思議なんだよな・・・・・。去年の夏はベスト4。そして秋季の大会では準優勝した。・・・・・・タイプ的にはこの前当たった軒峰に近いかな。しかし、この前川端の試合を見てみたが、やっぱり勝ち上がってくるだけあって格が上だ。」

「・・・・ま、今日はそろそろ全開で投げないとダメみたいだな」
木田さんは肩を回しながらつぶやいた。その表情はいつもより大分険しい。





「お願いします!!」
両者あいさつをして、ベンチへと帰っていった。先攻は川端高校。木田さんがマウンドに上がり投球練習を始めた。球はよく走っている。


・・・
・・・
・・・


「プレーボール!」
木田さんが足だけを上げて、第1球を投げた。まずは無難にストライク。
2球目。内角低目へのストレート。厳しいコースではあったが、平静と見逃した。
3球目。左バッターへの内から外へ逃げるスライダー。木田さん必殺の決め球だ。・・・・・・・しかし、これも普通に見逃した。ボール。カウント2−1。

「うーん、手堅いスタイルは変わってないですね・・・・・・」
と藤谷さん。・・・手に何か持っている、何だろ?
「藤谷さん、それ・・・・」
「これですか?僕が作成したデータベースです。名づけて「バタ西必勝マニュアル〜必殺諜報台帳〜」です」
「はあ・・・」

「今日の川端高校、去年優勝の陽陵学園、あといくつかリサーチしてあるんですけどね。見てみます?」
手渡された必勝マニュアルを見てみた。・・・うわっ、あんな情報やこんな情報がびっしり書き込んである・・・・・・すごいな・・・・


グラウンドを見てみると、1番バッターはベンチへ帰りつつあった。いつの間にか三振になったようだ。
続く2番バッターもあっさり三振にしとめた。・・・・木田さんやや飛ばしてるな・・・・・大丈夫かな・・・・・



そして3番バッターに投げた初球、内角へ食い込むスライダー。

「カンッ!」

腕を相当たたんで見事に持っていった。センター前ヒット。

「あれは土岐(とき)。川端の注目選手の一人です。」
「今のバッティング、すごいですね・・・・・よくあんな内角を・・・・・」
「次の打者も怖いですよ。この大会すでに3本塁打を放っています。」


もう一人の注目選手、喜久(きく)が右バッターボックスに入った。

木田さんが喜久に第1球を投じる。外角高めの直球。少し外れてボール。
そして第2球をバッターに・・・・・・・・・投げない!けん制だ!!

「アウトッ!」

完全に逆を突いた。3アウトチェンジ。
ランナーの土岐はかなり悔しがっている。

「あのランナー、めちゃくちゃ走塁上手いはずなんやけどなぁ・・・・そやろ、藤谷?」
監督は刈田に偵察OKを出してから考えを一気に変えたのか、今では藤谷さんの情報に結構頼っている。
「そうですね、盗塁も6つありますし・・・・やはり木田さんのうまさですね。」

木田さんの投球は高校生離れしている。もしかしてドラフト指名されたりして。



こうして1回の表が終わり、バタ西高校の攻撃が始まる。
1番はいつもどおり島田さん。・・・だが島田さん、ここまでホームランは2本あるものの、打率が2割ちょっとと頼りない。大丈夫かな・・・・・・


相手ピッチャー天城、今のバタ西打線でさえ恐れる好投手が投球練習をしていた。
サイドスローから直球を投げ込んでいる。

「あれ?そこまですごいピッチャーに見えないんですけど・・・・・」
「そうですか・・・・・・・・・・南条君はやっぱりもう少し眼を鍛えた方がいいですね」
「え?」
「木田さんのときと同じですよ・・・いい打者になるためにもがんばって下さい」

少しムッと来たが、おとなしく相手ピッチャーを見てみることにした。・・・・・・だがやっぱりそんなにすごいようには見えない。まず球が今いち早くないんだよな。うーむ・・・・・・


島田さんが左打席に入った。一回の裏の攻撃。まずは先制しておきたいところだ。

 

 

 

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