趣味:筋トレ、特技:腕相撲

 

______________9月1日 川端西高校 始業式____________


は〜あ、今日から新学期か。久しぶりの学校だなぁ・・・
まあ夏休みの間、一応野球部の練習のために学校へはほぼ毎日行っていたけど、それとこれとは話が違う。
って何が違うんだ?、と考えていると、後ろから巨大な影が迫ってきた。

「よぉ!南条!久しぶり!」
「・・・相変わらず制服が似合ってないな、鷲田。」
「いきなりそれかよ・・・・・まあ確かに、道着は俺の友、だからな。こんな堅苦しい服は似合わんよな。」
「ははは。まあお互い2学期がんばろうぜ」


挨拶してきたのは鷲田。柔道部に所属する超巨漢だ。一年生なのに身長は軽く180を超え、幅もある。ちなみに南条と同じクラスである。


「よお南条!久しぶりやなぁ!」
「久し・・・・・って、お前とはほぼ毎日会ってただろ。」
「まあそれはそれ、これはこれや。」

次に挨拶して来たのは新月。野球部に・・・・・・別にいまさら説明しなくてもいいか。
あ、こいつとも一応同クラス。これは今まで言って無かったかな。


「新学期か・・・・・誰か転校生とか来おへんかなぁ」
「高校だからな・・・・・まず無いだろな。」

「夢がないなぁ。お前には。・・・・・ああ、関西から新島にやってきて右も左もわからんとオロオロする女の子。そんな子を俺が関西弁でやさしくリードしてあげる。聞きなれた言葉に心を開くその子。そうこうするうちに2人の間に友情が芽生え、そんな友情はどんどん深くなっていってある時・・・・・・ってな出会いがないんかなぁ。男のロマンや、な?」


そんなこったろうと思ったよ。南条は無視して教室にいくことにした。


・・・
・・・
・・・


始業式が終わり、教室に帰ってきた。
「ふわぁあ、よく寝た。さ、これで今日も一日野球に身が入りそうや。」
新月、始業式の間ずーっと寝てたからな・・・・・・まあ俺もあんまり人の事言えないけど。


そのとき担任の先生が、意外な一言を放った。
「えーと、今日は転校生を紹介する」
「おっ」「えっ」

嘘!?高校1年のこんな時期に転校・・・・・?

「先生、その人どこから来たんですか?」
「お前と同郷だな。大阪だ。」
「おおおおおっ!!!」
「・・・・・新月、そこまで喜ばなくても・・・・・」
先生は新月が大喜びした本当の理由を知らない。


「いやぁ、来たでぇ。ロマンが。春や、夏やけど春や!・・・・・あ、悪いけど南条には渡さんで」
「・・・・・お前はしゃぎすぎだ。だいたい女かどうかもわからないし・・・」
「絶っっ対、女や。しかもかわいい子。・・・・・俺の勘、めっちゃ当たるんやで!」



先生があきれた顔で切りだした。
「・・・・・こらそこ、静かにしろ。じゃあそろそろ紹介しようか。転校生の 具志堅 海 (ぐしけん かい)君だ。」

ドアがガラガラっと開いて、なかなかガッシリとした男が入ってきた。・・・・・結構でかいな。

新月の勘は、見事に外れた。



「じゃ、具志堅君、みんなに自己紹介してくれ」
「・・・みなさんどうも初めまして。具志堅です。よろしくお願いします。・・・・・・先生、もうええっすか?」
「・・・いくらなんでも短すぎだ・・・・・じゃあみんな、何か具志堅君に質問とか無いか?」

一人の生徒が手を挙げた

「まずはやっぱり・・・・・趣味と特技は?」
「うーん・・・・・・趣味は・・・筋トレかな。特技は腕相撲。」


一瞬の沈黙の後、一部の生徒が笑い出した。

「さすが関西人!おもしろいぞ!」
「・・・・・いや、別にネタや無いけど。他に思いつかんので。」
具志堅は真剣に答えたようだった。

「あかん。まだまだ甘いわ、あほ。」
勘が外れた新月は八つ当たり気味にこうつぶやいた。


「他に質問は?」
「・・・・・クラブはどこに入るつもりですか?」
「野球部。前の学校では何も入ってなかったんやけど、中学の時は結構やってたんで。」


「ん!?お前も野球部か!?」
男と知ってすっかり興味を失っていた新月が、初めてまともに反応した。
「あれ、自分も関西人?」
「そうそう。ようわかったな。ま、後でじっくり話そうや。」

このやり取りはいったん終わり、再び質問タイムに入った。


・・・
・・・
・・・


「へえ。新月は寝屋川の出身か。」
「そや。今年こっちに来てん。お前はどこ?」
「大正。高校は大阪の公立に行ってた。」


大正とは・・・大阪府大正区。沖縄系の人が多いところ。具志堅、という苗字もそういう関係から来ているのだろう。


「そこで野球やってたんやな。俺も野球部やねん。そしてこいつも」
と言って、新月は南条を指差した。

「そや、グッち」
グッち、って・・・・・・新月お得意の即効あだ名付けだ・・・
「確かさっき、特技は腕相撲、って言ってたよな。・・・・・やっぱり、強いんか?」
新月はやや上目遣いで具志堅に尋ねた。

「ああ、結構自身あるで。」
「じゃあ、鷲田と勝負だな。このクラスで、いや、たぶんこの学年で一番腕力が強いはずだ。」
南条が提案した。

「いやいや、いきなり鷲田はあかんやろ。・・・・・・まずは俺らを倒してからや。」
「俺ら、って俺もやるのかよ・・・・・・」


こうして具志堅は、手始めに新月、南条と腕相撲勝負することになった。



「まずは俺からやな。結構夏休みに鍛えたんやで、俺。かかってこい!」
「・・・・望むところだ。」


南条が腕相撲の体制に入った二人の手を押さえた。
「レディー、ファイッ!」
「クイッ」「えっ!?」
「終了!具志堅の勝ち!」

勝負は一瞬だった。強い・・・・・・


「うーん、がんばって腕立てとかしたんやけどなぁ・・・・・・」
「じゃあ次は俺か。・・・あんまり強くないけど。」
南条が袖をまくりながら言った。・・・・・・お、意外とやる気やん。

「いやいや、ジョーは強いぞ。あ、ジョーって言うのはこいつのニックネームな。たぶんこのクラスでは二番手ちゃうか。」
「ほぉ、二番手か。楽しみやな。」

そして、新月がガシっと組んだ二人の手を押さえた。
「よーしいくでー。レディー・・・GO!」

「クッ」「ムムム」
「クイッ」

「終わり!・・・・・ほんま強いなあ、お前。」
勝負は3秒で終わった。・・・・・これは確かにすごいぞ・・・



「さあこれで、新チャレンジャー具志堅が現チャンピオン、鷲田への挑戦権を得ました!・・・・・おーい、ワッシー!ちょっと来てくれ!」
「ん?なんだなんだ?」
「具志堅と腕相撲、チャンピオンマッチや!」


「おお、でかいな。」
具志堅も身長的には鷲田に負けてないが、幅が違う。思わず感嘆してしまった。


「・・・・・二人とも、上脱いで。」
「え?なんで?」
「チャンピオンマッチや。そのほうが雰囲気出るやろ。お互いの筋肉見えたほうがええやん。」
なるほど。新月が巧みに演出する。


「まずはワッシーから!」
鷲田が制服の上着を勢いよく脱ぎ捨てた。
さすがというかなんと言うか、非常に肉厚だ。
ガチッ、とした感じではないが、かなり筋肉があることはわかる。・・・・・殴っても全然効かないだろうな・・・・・


「続いてグッち!」
具志堅が上着をがばっと取る。

「「「うわっ・・・」」」

ものすごい筋肉が出てきた。胸、腕、腹、全てにがっちりとついている。
まるでボディービルダーみたいだ。・・・・・・趣味は筋トレ、か・・・・・


「いよいよです!1年4組、いや川端西高校1年腕相撲チャンピオンマッチ!観客諸君、燃えてるかー!」
「「「オー!!」」」
いつの間にか机の周りにクラスの男子がほとんど集まっている。
・・・・・やっぱりみんな、こういうの好きだなぁ。


「よっしゃ、いくで!レディー・・・GO!」

「ハッ!」「フンッ」
さすが鷲田。そう簡単には動かない。しかし

「グググググ」「ンヌッ」
「クーッ」

「・・・・・終了!!!新チャンピオン!具志堅 海!!!」


新月がそう叫ぶと同時に、拍手が沸き起こった。


「いやーお前、強いなー。こんな強いやつ初めてだよ。久しぶりにこれで負けたよ。」
「いやいや、君もかなりすごかったよ。」

具志堅と鷲田は、ガッシリと握手した。

男と男の熱い勝負が、幕を閉じた。





・・・・・あ、この小説、一応野球小説だった・・・・・・ちょっと忘れてた。

そうそう、こんなすごいパワーを持ったやつがうちの野球部に来るのか〜。楽しみだな〜。
相当飛ばすんだろうなー、たぶん。

うん。これでよし、っと。

 

 

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