再加入、急告示

______________________9月12日____________________


9月18日、新島県春季野球大会、か・・・・・・もうあと一週間切ってますやん・・・・・・
にもかかわらず、監督からはレギュラー発表の気配すらない。いつになったら背中に背番号つくんやろか・・・・・

新月はそんな心配をしながらグラウンドに入ろうとしていた。

「ドンッ」
そのとき、後ろから誰かがぶつかってきた。
「あ、悪い。」

・・・・・・ったく、誰やねん・・・・・・そう思って後ろを見ると、やたらと大きな人がいた。しかもユニフォームを着ている。
あれ?こんなでかい人野球部におったかな?1年生かな・・・・・・いや、具志堅よりでかかったぞ・・・???
大きな人は、足早にベンチへと向かっていった。


・・・
・・・
・・・


外野で2年生の島田さんと林部さんがキャッチボールをしていた。ふと、林部さんがベンチへ向かっていく人影に気がついた。

「・・・・・島田、ちょっとベンチの方見てみろ」
「・・・ん?あれは・・・・・・土方!!?なんで今、ここにいるんだ?」
「おい、監督の身が危ないかもしれないぞ。ちょっと行ってみよう」
「・・・あいつはそんなやつじゃないよ。確かにあの時は・・・・まあいいや、気になるし行ってみよか」


・・・
・・・
・・・


大きな人、土方さんはベンチに入り、なにやら作業をしていた監督に声をかけた。
「・・・すいません、角田監督。少し時間をいただけませんか?」
「・・・・・・お前は・・・・・土方か・・・・・なんや?いまさら。お前と話すことなんて無いぞ。」
「・・・まずはそのことからです。・・・・・・1年前のこと、本当にすいませんでした!」

「ああ、謝りに来たんか。それはええ心がけや。・・・・・・さ、もう帰ってくれるか。ワシ今ちょっと忙しいねん。」


受け流されそうになったが、土方さんはもう一度決心して切り出した。
「・・・今日はもう一つ話があるんです。実は・・・・・」
「・・・・・・それ以上言うな。だいたいお前の言いたいことはわかる。」

「え?」
「野球部にもういっぺん入りたいんやろ?」
「・・・・・そうなんです。もう一度、もう一度だけチャンスを下さい!今の俺には野球が必要なんです!」

角田監督は見る見る不機嫌な表情になって言った。
「・・・ああそうか。お前はこの野球部が必要なんか。でもこの野球部は、川端西高校野球部はな、お前を必要としてへん。・・・・・・こっちは遊びでやっとんとちゃうねん。お前のような人材は必要ないんじゃ。早よ帰れ。」

ここまで言われて、今日は絶対におとなしくしようと決めていた土方さんもさすがにキレそうになった。・・・と、その時


「おっ!啓(ひろし)!久しぶりじゃん!お前がもう一度野球部に来るなんてなっ!」
「・・・・・昭。」
土方さんと島田さんはお互いの名前を呼び合った。

「監督!こいつがもう一回やる気になったんですよ。嬉しいことじゃないですか!な、啓!」
「・・・そうです。俺は本気でこれから野球を・・・・・」

「黙れ!!!」
角田監督が一喝した。


「今さらなんや、と言うとんねや。自分から野球と縁切ったんちゃうんかコラ!・・・お前は力使うて人の上に立っとったからなんでも都合よく行く思てるのかもしれんけどな。こっちはそうはいかんのや!・・・ほら、何回言わせる気や。早よ帰れ言うてるやろ!」



ベンチは静まり返った。



「・・・・・・啓。今日はたぶんダメだ。また時期を置いてから・・・」
「おい島田。今日は、やない。ずっとや。おまえもごちゃごちゃ言わんと早よ練習せぇ。」
角田監督はそういい残し、どこかへ去っていった。


「なあ啓、お前本当に野球やる気になったのか?」
「・・・ああ。・・・」
「最近まじめに授業に出てるのも、そういうことなのか?」
「そうだ。・・・俺は・・・・・俺はやらないとダメなんだ。このままじゃ俺は・・・・・・」



______________________9月13日____________________



藤谷さんはすっかり待ちあぐねて、監督に思い切って聞いてみた。
「・・・監督、秋季大会のレギュラー発表まだなんですか?」

監督は、あっ、と言う表情になった。
「そうや、まだ言うてなかったな。すっかり忘れてた!いやー藤谷、知らせてくれてありがとな」

・・・まさかとは思ったが本当に忘れてたとは・・・・・・・


・・・
・・・
・・・


「・・・と言うわけで、みんな今まですまなんだな。だいぶ不安やったやろ?じゃあ、ベンチ入りメンバーの発表いくで。」
「ところで監督、もうメンバーは決まってるんですか?」
質問するのはもっともだ。今まで忘れてたのに・・・・・・即席で決められたらたまったもんじゃない。

「いやいや、もう4日ほど前に決めててんけどな。だから大丈夫。心配するな」
そこまでして忘れるとは・・・・・・・本当に大丈夫なのか?


「さて、背番号発表するで

1番 中津川
2番 藤谷
3番 村岸

                    」


ま、この辺までは順当なとこかな。


「4番 山江」

ああ、やっぱり刈田は無理か・・・・・・まだ打撃がなぁ・・・・・

「5番 南条」


お、俺入った!いやー、よかったよかった。


「6番 新月」
「よっしゃ!!」
「コラ!静かにせい!」

絶っ対、やると思ったよ・・・・・

「全く・・・・・続けるで

7番 林部
8番 島田
9番 角屋

ま、スタメンはこんな感じや。続いてベンチ 

10番 浜辺 」


ちなみにこの人は、2年生の控えピッチャーである。確か外野も出来たと思う。


11番 柴島
12番 後藤
13番 刈田

  ・
   ・
   ・
 16番 具志堅
   ・
   ・
   ・     
以上!この18人で秋季大会は優勝や!」

「「「「「はい!!!」」」」」


いつもの通り、野球部のみんなはざわつき始めた。
「ジョー、新月、スタメン入りおめでとう!」
「はっはっは!当然や、当然!前ベンチにおったのが異常やってん!」
「・・・・・・の割には、ずいぶん必死に朝から素振りやっとったな。」
具志堅が横から冷たく突っ込んだ。

「うっ、お前、見とったんか・・・・・・まああれや、天才は1の才能と99の努力で出来ている、ってやつやな。うん。」
「・・・打てなかったらいつでも代打してやるぞ」

「・・・・・・絶対、活躍したんねん」
今、新月にとってまた新たな目標が誕生した。


「まあ新月は置いといて。ジョーは結構いいとこ打たせてもらえるんじゃないか?」
「え?そうかなぁ?」
「シートでもようミートしてたよな。これだけの1年生バッターは俺の前の学校でもなかなかおらんかったで。」
「うん。まあがんばるよ。」

そうか、俺そんなにすごかったのかな。・・・・・・とりあえず大会中出来るだけ使ってもらえるようがんばろう。



「はい、喜ぶのはそこまで。全員ちょっと静かにしろ。監督から話があるそうだ。・・・・・・監督、どうぞ」
キャプテン角屋さんが場を鎮めた。

「うん、話って言うのはな、9月14日に川端高校と練習試合を約束した。各自それに向けてしっかり練習せぇよ!」

「はい!
・・・・・・って、14日って明日じゃないですか!!!?」

キャプテンを初め、野球部全員が驚いた。いくらなんでも急すぎるだろ・・・・・・

「うん。まあいつ試合してもええように調整する、ってのが野球選手のスキルの一つでもあるしな。」
・・・ほんとかなぁ・・・・・・また忘れてたんじゃ・・・・・・

「ま、そういうわけで、大会直前の大事な試合や。ただの練習と思わず本気で行けよ。向こうもおそらくその気のつもりや。」
「「「「「「・・・・・・はい」」」」」

あきれ返ってしまったメンバー達の返事に、いつもの活気はなかった。

 

 

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