諜報部

 

________________9月14日 川端西高校 野球部部室_______________


藤谷さんが机にノートを載せてなにやら書いてある。あれは・・・・・・・「必殺諜報台帳」かな。

「藤谷さん」
「お、刈田副部長。」
刈田は、藤谷さんから最近この肩書きで呼ばれることが多い。
刈田は、藤谷さんが勝手に立ち上げた組織、「バタ西野球部配下諜報部」の副部長に選ばれたのだ。・・・・・と言っても、そんな得体の知れない組織の幹部をやろうなんて人間は刈田ぐらいしかいないのだけど。

「ところで昨日の試合でちょっと心配になったんですけど・・・・・・バタ西はどれぐらいまでいけそうですか・・・?」
「そうですね・・・・・・昨日、中津川君が打たれていたのには僕にも責任がありますから。初めての実戦で、僕がどうリードすべきかが見えてきましたよ。それを考慮すると・・・・・・2回戦ぐらいまでは十分いけるはずです。1回戦、2回戦、どちらの相手もそう強くは無いみたいですからね。」

それでも2回戦までしか保証できないか・・・・・うーん・・・・・


「あ、そうそう、副部長。今日は活動いきますよ。」
「活動・・・・・というと偵察ですか?」
「それしかないでしょう。君は陽陵に行ってください。3回戦で当たる相手への最後のチェックです。・・・僕は軒峰に行ってきます。乾がすごくいい球を投げるようになったらしい、と聞きました。準々決勝で当たる可能性もありますし、見ておかないと。」

ちなみに軒峰高校とは04年夏の3回戦で当たった。そこのエースが乾。確かにバランスの取れたピッチャーではあったが・・・・・


「・・・でも確か、以前コールドで破りましたよね。」
「あの時はまだ決め球がなかったですからね。うちの打線が強力だった、と言うか乗っていた、というのもありますが・・・・・」
「・・・・・・やっぱり陽陵のほうが重要なんじゃないですか?重要なところには部長が行った方が・・・・・」

刈田は思わず「部長」と呼んでしまった。大分藤谷さんのペースに巻き込まれてしまってるな・・・・・・

「いや、僕の場合陽陵はちょっとまずいんですよ・・・」
「なんでですか?」
「それは・・・・・・」


藤谷さんは、かなり言いづらそうにしたあと口を開いた。

「実は今までに、2回ほど捕まってるんですよね・・・・・」
「捕まった!?」
「監督には絶対言わないで下さいね。絶っ対に!・・・タダでさえこうやって偵察することをすんなりとは認めてくれないのに、ばれたら大変ですから・・・・・・二度とできなくなりますよ・・・・・・・・」
「はい・・・・・でも大丈夫だったんですか?」

「捕まった、と言っても警備員さんにですけどね。そこのお前、何してるんだ、て感じで。1回目はまあ何とかごまかしたんですけど、2回目はこってりしぼられましたね・・・・・・3回目は不法侵入で本格的に御用になるかもしれませんね。」

うわぁ・・・そんなことになったら秋季大会どころじゃないぞ・・・・・・・

「はぁ・・・・・・・偵察は大変ですね」
「ええ。命がけですよ。」
いや、それはさすがに大げさ・・・・・・かな?

「と言うわけで、刈田君が陽陵に行ってください。頼みますよ。」


しかし藤谷さんって、やっぱりなんか変な人だなぁ・・・・・普通、一回捕まったらやめそうなもんだけど・・・・・・


そして、二人はそれぞれの任務を遂行するため川端西高校を出た。


・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・


ちなみに結果はと言うと、とりあえず二人とも無事に生還した。

陽陵は引出がまたよくなっていた。1年生とは思えない切れのあるストレートと、超スローカーブ。対戦するとなるとかなりてこずりそうだ。

打線は開成ほどの絶対的な主砲はいないものの、一人一人がいい振りをしている。やはりここが優勝候補だろう。


一方藤谷さんが行った軒峰。うわさどおり乾はグレードアップしていた。なにやら新球種を覚えたらしい。
でも、「敵を欺くにはまず己から」とのことで、藤谷さんは乾の新球種が何なのかは教えてくれない。気になるなぁ・・・・・

打線では、2年生の東谷という外野の選手がいいバッティングをしていたそうだ。たぶん主軸になりそうだ。


さ、下準備はだいたい終わった。これからいよいよ最終調整だな・・・・・

 

 

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