ドラマ

 

「具志堅ー!外野フライでもいいぞ!」「一点取ったら同点だ!楽に行け、楽に!」
そうは言っても、みんな必死やなぁ・・・・・・まあええ。飛ばすことにかけては、自信あるからな・・・・・・

ピッチャーが左腕からボールを投げた・・・・・

「シューーーーーーー・・・・・・パシッ」
「ストライク!」

・・・・・・今のはいい球だ。かなり低めに決まった。打つにはかなり技術がいりそうだな・・・・・・
でもあの投手、あまり球質は重くなさそうだ。真ん中から上の球をしっかり叩いていけば、外野には飛ぶだろう・・・・・・

第二球が投じられる・・・・・・・よし、真ん中・・・・!

「・・・・・スッ・・・」
「・・・くっ」

フォークだ!危ない危ない・・・・・・・何とかバットは止めたつもりだが、判定は・・・・・・
一塁塁審は、親指を立てた腕を上に上げた・・・・・・しまった・・・・・・・2ストライクに追い込まれた・・・・・・


もう後がない。第三球。まあおそらく一球様子を見るやろうけど、もしちょっとでも怪しい球がきたら意地でも打たなな・・・・・・・三塁ランナーはかなりの俊足だから、当てさえすれば何とかなるやろう・・・・・・


そう割り切っていた具志堅に対し、陽陵バッテリーはインハイのストレートで三球勝負を仕掛けた。
フォークで空振りを奪った後だから、高めの速球には手が出ないだろう。もし出たとしても、インハイの威力のある球は簡単には飛ばされないはずだ・・・
下手に逃げるより、フォークの軌道が頭に残っているうちにズバッと決めてしまおう、と。

この判断は間違っていない。いや、むしろ適切だといってもいいだろう。しかし、野球というのは往々にして、予定通りにいかない場面があるものだ。そこが難しいところであり、また面白いところでもあるのだけど・・・・・・

「カキーッンッ!」「!?」


具志堅が高めに来た球をセンターにはじき返した。打球は上がって、伸びていく・・・・・・
「お、うまい具合にあがったな。これで同点に・・・・・・」
「いや、待て!かなり伸びていってるぞ・・・!」

ボールはセンターの頭を越しても、勢いが落ちない・・・・・・・・・そのまま、フェンスを越した・・・・そして、バックスクリーンの上、時計の下あたりに当たった・・・・・・・・・・スコアボード直撃。文句なしのホームラン。


6−8。川端西高校は、具志堅の一発で試合をひっくり返した。


・・・
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・・・


結局、その3点が決勝点となった。試合終了。


南条はその後、6回、7回も好投を見せた。とてもスクランブル・・・と言っても表しきれないような、突然の登板だとは思えないピッチングだった。球速は、最高でなんと136km/hを記録。途中からはカーブも交え、陽陵打線を翻弄した。
・・・とはいっても、しょせんは急造投手。8回には連打され1点を失った。その時点で角田監督はすかさず投手を2年生の浜辺さんに代えた。・・・・・・・まあ、最初からその心づもりではあったようだが・・・・・・

浜辺さんは緩いカーブを中心に丁寧に投げていく軟投派。再び「チェンジアップ効果」が発動し、見事無失点に抑えた。


一方の陽陵は具志堅の3ランの後3人目の投手を投入し、そこでバタ西打線の勢いは止められてしまった。

はじめからその3人目のピッチャーを投げさせれば勝てたんじゃないか?と言う人もいるかもしれない。しかし、それが見抜けないからみな苦労するのだ。そのタイミングを見極めるため、采配をする者は日夜研究する。
野球はドラマだ。この試合に限らず、やはりその一言に尽きるだろう。



決定的かとも思える点差をつけられ、一度は試合をあきらめた者さえいた。
だが、ほとんどの者はあきらめなかった。指揮者もそれに応えた。その回答が、一見奇抜とも思える采配だったのだろう。

ついに、新島県の王者を破った。さまざまな課題は残ったものの、後は突っ走るだけだ。
自分たちが、王者の座につけるように・・・・・・

 

 

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