もう一人の退部者

 

____________8月20日_____________

寮に衝撃が走った。長村退部はすぐに野球部全体にひろまった。長村が廊下を歩いていると「何があったんだ」「考え直せ!」「何故退部するんだ?」と問い詰められたが長村は答えなかった。もし、答えて誰かが高野連にでも訴えて退部が取りやめになってもこれ以降、野球部入部者が来ないかもしれないからだ。

「長村・・・」
矢田でさえも長村に問い詰めても答えなかった。大野監督に呼ばれ真相はなんだと問い詰められても答えなかった。長村は自分の部屋に行き荷物をまとめようと歩いていた。
「おい、長村」
松山が長村に声をかけた。その表情が普通なのは長村の退部を知らないからだろう。
「どうしたんだ長村?今日は元気がない見たいだな」
松山は長村に聞いた。長村は松山にだけは真相を話そうと決めていたので退部したこととその理由、そこまでの経緯を松山に話した。
松山は表情を変え驚いて動けない状態だった。松山はこれではいかんと
「こ、今後の行き先は決めたのか?」
「いや、決めてはいない、まあ、どこかにでも入って野球をやるってことしか決めてないな。まあ、頑張れよ松山」
長村はそう言い自分の部屋に入った。

松山はは自分の部屋に入ると考えだした。
「これで果たしていいのか?いや、駄目だ。しかし、理事長に逆らうということは退学だ・・・」
松山は考えながら軟球を取り出した。その軟球を見ながら松山は考えた。
「俺がリトルの頃監督の方針がめちゃくちゃだったから監督を自治会に訴えた。子供のことより自分の名誉に繋がることしか考えていない監督だった。監督は解任が決定したが解任までの間に俺はリトルを追われそうになった。そのときに友達が俺をかばい代わりにやめた。俺もやめようとしたがそいつに止められた。今は事情こそだいぶ違うが長村は同じような状況だ。真相を知ってる俺が無視すれば長村は辞める。はむかえば俺も退部、それでいいことだ」
松山は考えながらあの言葉を思い出した。やめた友がリトルで最後に言った言葉。松山が何故、代わりにやめ自分が損するようなことをしたのか?と聞くと
「自分の良心が許せなかったからだ。俺は辞めたけどそれでいいと思ってる。あのまま黙っておくほうが嫌だった」
松山はその言葉を思い出し決めた。
「俺が代わりに退部する」
松山はタクシーで本校まで行くと理事長に言った。
「俺が辞めます!」
しかし、無理だった。松山に怒りがこみ上げてきた。
「こんなとこにいてたまるか!!」
松山は退部届を突き出した。松山も退部した。


「こんなとこに居たほうがよっぽど嫌だったよ」
松山は退部した後荷物をまとめた。その後、退部してバスに乗ろうとした長村を追っかけ俺も退部したといい長村とバスに乗り込んだ。


松山の目は退部したことを後悔していない目だった。

 

次へ

浪速高校野球 野球伝 目次に戻る

小説メニューに戻る

ホームに戻る

 

 

 


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送