捕手転向

 

____________10月1日_____________

浪速商業ナインの秋季大会は終わった。それなのにグラウンドはとても騒がしい。一体何事だ?長村は疑問におもいながらもその輪の中へ入った。

「どうしたんですか?」
「ああ、長村か。これを見ろ」
大町さんが手渡した今日のスポーツ紙、一体なんなのだろう。
「えーと、厚生省、年金改革に乗り出す?これですか?」
「違う違う、別のとこも見てみろ」
「えっ、えーと、医療ミス、医師3人逮捕」
「それでもない」
「じゃあこれかな、東北地方、地震襲う」
「違う!」
「じゃあスポーツの・・・・・ノーヒットノーラン!?」
「そう、それだ、詳しく読んでみろ」
「それじゃあ・・・大阪大会準決勝、摂津大学附属高校1年、鍋島亮投手、ノーヒットノーラン達成。さらに17奪三振、1四球、最速144km、プロ注目投手現る」
「そうだ、摂津大附属にいたことがあるならどんな投手かわかるか?」
「どんな投手も何も、リトル時代の友達ですよ」
「そうなのか、どんなやつだ」
「性格はひね曲がってないですね。投球はフォークが怖いですね」
「怖いフォーク?投げれるか?」
「無理ですよ、あのフォークは、松山なら少しは参考になることを知ってるかもしれませんね」
そう言った途端、ナインは松山のほうへ走り出した。

松山はノックを受け終わった後、すぐに素振りを始めた。すると、橋元が近づいてきた。
「タフだな、あれだけノック受けてすぐに素振りか」
「ああ、これくらいやっとかないと夏の大会はスタメンに入れないかもしれないからな」
橋元は少し考えながら、真剣な目つきに変わった。

「実は頼みがあるんだ」
「頼み?金ならかさねぇぞ。帰りのバス代しかないから」
「金のことじゃない!本当に真剣な話なんだ」
「まあ聴こうじゃないか」
「実はな・・・・・背番号2を受け取って欲しい」
「背番号2・・・・・って、本当にか?」
「ああ」
「でも背番号2というと正捕手の番号じゃ・・・ということは」
「いや、転向はしない。ベンチ捕手に退くだけだ」
「でも、守備はそんなに上手くもないし、監督に頼んでも走してもらえるかも・・・」
「大丈夫だ。昨日、監督に頼んで松山が正捕手に向いていると説得して松山の了承を得れば背番号2は松山にすると言った。後はおまえ自身の気持ちだけだ」
「いや、でもな、捕手転向はそう軽くないものだ」
「わかってる。俺自身がその経験者だ。試合での場合によっての守備配置の指示、打者の考えてることを読みそれによって配球を決める。投手がゲームの8割を持っているというが捕手があってこその8割だと思う。それに、あのマニュアルがあってこそ昨日の試合ができたと思う頼む、背番号2をもらってくれ」
「だがな、指導者も元捕手なら可能性はあるが・・・」
「浪速商業史上最強のバッテリー大野克己ー山井恭司さんの山井監督がいる」
「そうだったのか!」
「そうだ、だから頼む」

松山は考えた。どうする、ずいぶん前だが一時期捕手になったことがある。経験は3ヶ月ちょっとだが・・・・
「・・・わかった。監督に頼んでくる」
松山は監督のほうへ向かった。橋元はほっとした。
監督のほうへ向かう松山の目は決意で満ちていた。

 

 

第二部終了

 

 

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