豪速球

 

後攻の一般側の4番には唐澤が打席に立った。関西独特のじめっとした空気がグラウンドを通り抜けた。唐澤は少しバットを振った。

「九条か・・・どこかで聞いたことがあるな・・・」
唐澤が少し思い出しそうになるとキャッチャーの郡川が
「おやおや、知らないのか、無知な奴だ」
郡川の言葉に唐澤は少しいらついたが気持ちを落ち着け
「そういえば・・・シニアにいた時聞いたことがあるな、中学生で140kmを投げる奴がいるって・・・」
「ようやく思い出したか、無知なわりには早かったな、思い出すのが」
郡川は『無知』と言う言葉を強めていった。唐澤はこれが策略だという事に気づいていらつく気を振り払った。
「シュッーーーーーーーグォォ」
凄まじい球威を持った球が今までに聞いたことのない音を出しながら襲って来た。唐澤は打てないと判断し見送った。
「ドンッ!」
「ス、ストライーッ!」
主審をやっている福山さんも驚いた。一瞬、150kmとも思えた球だった。長村はどこからかスピードガンを取り出した。
「長村、何でそんな物持ってんだ?」
「ちょっと部室にあったもんで」
長村はスピードガンを起動させた。

唐澤は第二球を叩こうとして神経を集中させた。最初の球を見送って大体見当がついた。
「・・・ジャイロボールか・・・」
「よく解ったな、褒めてやろう、でも打てなきゃ意味はねぇけどな」
郡川はそういってサインを出した。九条は大きく振りかぶって第二球を投げた。
「シュッーーーーーグウォォーー!」
響き渡るような音がした。明らかに高めだ。唐澤は短く持っていたバットをミートを心がけるようにして振った。
「ブォン!」
「バシンッ!」
ミットに速球が納まった。球速は137kmだが見た目は150kmにしか見えない。
唐澤は神経をさらに集中させた。郡川が声をかけるも全く話さない。九条はサインが出されたのか振りかぶって球を投げた。
「シュッーーーーグォォ!」
「ボール!」
1球外れたが危うく振りそうになった。九条が投球フォームに入った。唐澤がそして口を開いた。
「凄い奴だな、改めて感心するよ」
そういうと九条は既に腕を曲げ始めて今にも投げる寸前にまた唐澤は口を開いた。
「しかし、欠点があるよ・・・」
九条はボールを放す寸前に唐澤は
「このボールはミットの入る前には球の球威がずいぶん弱くなっているんだよ」
郡川は顔を蒼くした。まさかばれるとは・・・
「カキィンッ!」
バットを振りバットに当たった反動でボールは飛距離が伸びていく。唐澤の力と打撃技術でうった方より球の球威で飛ばしたといってもおかしくはないほど伸びていった。打球は校庭まで伸びていった。
「は、入った、入ったぞ!」
唐澤はガッツポーズをして走った。一方、九条はマウンドに両手を地につけ、いまだ信じられぬ表情だ。

・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・

その後、九条は自分のテンポを取り戻せぬうちに一般側がバットを短く持って安打を重ね4点を追加。一方、矢田はシンカーを中心とした投球で推薦側を翻弄した。そして試合は・・・

「ストライーッ!バッターアウッ!ゲームセット!」
矢田と沼田が抱き合い次々と集まる。一般側が6−3で勝ちを?ぎ取った。推薦は落胆の色を隠せない。グラウンドを去ろうとした一般側に推薦の郡川が唐澤に
「見直したよ、試合前の言葉を撤回するよ」
「ああ、それはありがたい」
郡川と唐澤は握手をして別れた。

 

次へ

浪速高校野球 野球伝 目次に戻る

小説メニューに戻る

ホームに戻る

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送