第二十二話 延長戦の末

 

延長戦、10回の表。俺もそろそろばててきた。まあ高橋先輩がいるから大丈夫だろうが。と、その前に監督の話があるらしい。
仙田監督「今日の試合に勝てば甲子園出場にぐっと近づく。川崎、まだ投げられるか?」
俺「まだ大丈夫です。」
仙田監督「それじゃそのまま行こうか。」

10回。相手は8番、佐田からだ。まずは一球目、スライダーをうまくとらえられたが、フライになり、ワンアウト。9番青崎は三振。1番小山田にヒットを打たれた。
俺「やばいな・・・打たれちゃった。牽制でもしてみるか。」
「ヒュッ」
俺は一塁に牽制した。
小山田「へっ?」
小山田が飛び出している。一塁アウト。意外な形でアウトが取れた。

10回裏は三者凡退。

11回表。マウンドにつこうとした俺に交代が告げられた。ピッチャーは高橋先輩だ。
仙田監督「川崎、無理はいかんぞ。」
俺「はい・・・」
そして11回表。高橋先輩はなんとかツーアウトまでは取れたものの、4番緒方にホームランを決められてしまった。

11回裏、三者凡退。それで2対1で試合終了。八方高校が勝ちとなった。

俺は31人の打者に対し、破安打2、破本塁打1、失点1と好投だったが負けてしまった。試合が終わってから高橋先輩が話しかけてきた。
俺「あ、先輩・・・」
高橋先輩「・・・すまんかったな。」
俺「いえ。失点は二人とも同じじゃないですか。」
高橋先輩「しかし・・・」
俺「いやぁ、俺があそこで本塁打を打たれてなかったら勝ってたんです。責任は俺にありますよ。」
高橋先輩「・・・しかしだな。」
仙田監督「自分を責め続けるのはどうかと思うがな。」
仙田監督が現れた。
俺「あっ・・・監督。」
仙田監督「確かにお前にも責任はあったと思う。しかし、その悔しさをばねにして、強くなっていけ。人間とはそういうものさ。」
高橋先輩「・・・」
俺「そういえば高橋先輩は野球続けるんですか?」
高橋先輩「まあな・・・」
俺「なら、頑張ってくださいよ。」
高橋先輩「・・・えっ・・・いや、ちょっと・・・」
俺「それじゃ、後で会いましょう。あ、それと一試合であきらめるのはどうかと思いますけど。」
俺は走っていった。
高橋先輩「頑張って・・・か。」
仙田監督「これでやめるわけにわいかんことになったな。」
高橋先輩「そうですね。に、しても川崎はなぜ俺が野球をやめようと思ってること分かったんだろう。」
仙田監督「川崎は不思議だ。いろんな意味でな。まさにアイツとそっくりだよ。」
高橋先輩「アイツって誰ですか?」
仙田監督「い、いや。こっちの話だ。」

学校

原板キャプテン「今日で俺たち3年生は卒業する。残念ながら甲子園出場という夢は果たせなかった。それで次のキャプテンだが・・・川崎なんていい感じじゃないのかな。」
俺「えっ!俺ですか?
3年生「川崎なら安心して後を任せられるな。」
2年生「いいんじゃないのかー?」
1年生「川崎先輩がいいですね。」
友子「ま、ちょっと心配だけどいいんじゃない?」
原板キャプテン「やってくれるかな?」
俺「いいですよ。やります!」
原板キャプテン「これにて、挨拶を終了する。」
こうして3年の先輩たちは野球部を卒業していった。

夏休みの前のある日の教室
俺「でさー、オールAができたと思ったらさー、交通事故でパーだよ。」
俺は昨日のパワプロのサクセスの話をしていた。
占「それって悲しすぎるじゃん。」
同級生A「おーい、川崎。3年生の高橋先輩が呼んでるぞ。」
同級生B「何か悪いことでもしたのか?」
俺「違うよ。」
同級生A「屋上に来てくれってさ。」
俺「なんだろう・・・」

屋上
俺「なんですか?先輩。」
高橋先輩「実はだな・・・これをわたしたいと思ってな。」
そういうと先輩は古びたボールを取り出した。
俺「なんですか?これ。」
高橋先輩「俺のボールだ。これで練習してくれたら幸いだな。」
俺「これを・・・俺に?」
高橋先輩「これはな、話せば長くなるが、落し物であったボールを拾ってな、交番に届けたけど落とし主が現れなかったから俺がもらったんだ。それでそのボールで練習してたらドブ川に落としちまってな。俺が泣いてたらオフで休みだったあるプロ野球選手が新しいボールをくれたんだよ。それからそれは俺の一生の宝物さ。」
俺「と、いうことは・・・これはドブ川に落ちたボール・・・」
高橋先輩「違う。もらったほうだ。」
俺「えっ!これって大切なものなんじゃ・・・」
高橋先輩「ああ。だからこそもらってほしいんだ。俺の野球への情熱を思い出させてくれたお前にな。」
俺「わかりました。」
俺はボールをポケットにしまった。
高橋先輩「おっと、関係ないはなしだが実はそのボールをもらってから球速がなんだが速くなったような気がしてな。調べてみたんだが特に変わったところはないらしい。不思議だろ?」
俺「はい・・・」
高橋先輩「それだけだ。夏休み、エンジョイして来いよ。」
俺「はい!」
さて、もうすぐ夏休みだ。

 

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