第五十九話 勝者は・・・

 

残りの打者はアウトにした。しかし3対0・・・残り3回で同点、または逆転できるのか・・・
7回表、峯川からの攻撃だ。
峯川「それじゃ、そろそろ本気で行きますか。」
俺「おっ!でた。峯川の本気。ホームランたのむぜ!」
峯川がバッターボックスに立った。
「ビュッ!」
峯川「きたっ!」
「キーン!」
打った!峯川の打球は打った瞬間誰もがわかるようなホームランだった。普通のピッチャーなら、ホームランを打たれたら動揺するはずだが、天竜は平気な顔をしていた。

俺「やったな、峯川。」
峯川「ええ。」
アナウンス「2番、ピッチャー、川崎君」
川崎「よし、行ってくるぜ。」
天竜の最高球速は148キロ。打てるかな・・・
「ビュッ!」
天竜はど真ん中にボールを投げた。しめた、失投だ!
「キーン!」
打球はレフト方向に行った。レフト、玉前が追った。俺はファーストを回った。そして打球が落ちた。それと同時に俺はセカンドを回った。レフト玉前が球をとった。そして送球しようとしたとき、もたついて玉を落としてしまった。俺はちょっと戻ろうとして止まったが、サードへ行った。玉前はショートへ送球した。それと同時に俺はサードを回った。そう、ランニングホームランを狙うつもりだ。
ショートが捕球して、送球しようとしたとき、俺はサードとホームの真ん中にいた。そしてショートがホームへ送球した。微妙なところだ。俺はホームに滑り込んだ。キャッチャーもボールを捕球した。
「ズサー!」
全員の目が審判に集中した。
審判は両手を横に広げた。
俺「や、やったー!」
占「や、やったね!すごいよ!ランニングホームランだよ!」
これで3対2、あと一点差だ。
アナウンス「3番、セカンド、占君」
俺「頑張れよ!」
占「うん。」
天竜が第1球を投げた。ストライク、直球だ。
仙田監督(140キロか・・・完全に動揺している。倒すなら・・・いまだ!)
第2球、変化の落ちたスライダーを占がとらえた。
「キーン!」
ヒット。3ベースになった。

4番、斉藤君はフォアボール。今試合初めてのフォアボールになった。
斉藤君「ふはは、この俊足、斉藤様が出塁したからにはもう安心だ!すぐにでもノーアウト2、3塁になるだろう!」
斉藤君はものすごい大声で叫んだ。
俺「斉藤君、天竜は多分斉藤君のことをマークすると思うよ。」
斉藤君「ふ、マークされてても盗塁する、これが、俺流だ。」
そう言ったあと、斉藤君はサードランナー占と監督に何かいいに行った。多分「俺は盗塁するぜ!」みたいなことだろう。
アナウンス「5番、サード、田村君」
田村がバッターボックスに入った。予測通り、天竜は斉藤君に何球も牽制球を投げてきた。果たして本当に盗塁できるのだろうか・・・と、天竜が球を投げようとした瞬間に斉藤君がスタートした。遅い、スタートが遅い。いくら斉藤君でも最竜の強肩に、しかもこのスタートで勝てるはずがない。
と、田村がバントした。あ、バントか。バントは少ししか転がらなかった。
最竜はボールの受けると、ものすごい送球でファーストへボールを送った。天竜はセカンドのほうを見ている。と、最竜がボールを投げたと同時に占も走った。そ、そうか!ボールをセカンドへ送らせ、そのうちにホームへいく。天竜はホームに占が行ったことにはきづかず、ファースト、大竜はボールを受けると、ホームへ送球した。
天竜はびっくりしたようだ。そのすきに斉藤君はセカンドをらくらく回り、サードに行った。(先にファーストランナーをアウトにしたため)
ホームは、最竜のほうが一足早くボールをキャッチした。占はこのままではらくらくタッチアウトだ。しかし、占は突っ込んでいく。
占(仙田練習、「サンドバック練習」の成果、今見せてやるぜ!)
占は思いっきり最竜に体当たりした。クロスプレーだ!
「ドカッ!」
最竜「うっ!?」
最竜は倒れて、ボールを落とした。
審判「セーフ!」
やった、これで同点だ!と、斉藤君もホームを回っていた。最竜はすかさず斉藤君にボールをタッチしようと立ち上がった。
斉藤君「フッ、本場アメリカのクロスプレーを見せてやるぜ。」
そういうと同時に斉藤君は全身の体重を前にかけ、体当たりした。最竜は再び吹っ飛んだ。ボールを落とした。
審判「セーフ!」
俺「や、やったー!これで逆転だ!」
最竜はすっかりのびている。

アナウンス「竜王高校、選手の交代をお伝えします。ピッチャー、天竜君に変わりまして、豪竜君。守備の交代、キャッチャー、最竜君に変わりまして、中井君。」
ついに出た。結局天竜の弱点は、打ち込まれると弱くなる。そういうことだった。(最竜は、立て続けにクロスプレーを食らったためのびてしまい、交代になった)
俺「天竜は「パワプロ」で言う「打たれ強さ2」なんだ。」
峯川「最竜はかわいそうですな。」
豪竜・・・とんでもない直球を使うと占はいっていた。165キロ・・・ありえないだろ。
アナウンス「6番、ライト、江川君」
豪竜が1球目を投げた。
「ビュッ!」
「ゴオッ!」
「ズドーン!」
審判「ストラーイク!」
スピードガンには・・・163キロと表示された。
俺「え、ええぇ!?163キロ!?」
観客席から驚きの声が聞こえた。

そのまま残りのバッター三振。7回裏も俺が抑えた。8回表も全員三振。

8回裏
俺はとんでもないピンチにおかれていた。ツーアウト2、3塁、バッターはラストバッター中井。「あれ?中井ってそんなピンチにするほどのバッターなの?」と思うかもしれないけど、こないだも言ったとおり、竜王高校はパワーヒッターぞろいだ。それはベンチ入りメンバーも、ピッチャーも例外ではない。ついさっき豪竜に超特大ファールを打たれたところだ。
「キーン!」
打たれてしまった。レフト方向に。斉藤君がバックし、バウンドした球を取ったものの、サードランナー、セカンドランナーとホームインし、逆転されてしまった。中井はサードでタッチアウトしたものの・・・

8回裏終わって4対5。ついに・・・最後の9回表。

アナウンス「3番、セカンド、占君」
占「それじゃ、出塁してくるよ。」
占はそういうとバッターボックスに入った。
占「ふぅ・・・」
豪竜が振りかぶって1球目を投げた。
「キーン!」
俺「おっ!?」
峯川「おえっ!?」
斉藤君「うおえっ!?」
大竜「ほう・・・」
占は少し遅れ気味にスイングしたが、ライト方向に打球は転がった。フェアだ。
占は二塁に行った。
大竜「・・・豪竜の球を初球から・・・面白いやつだ。」
さて・・・次は・・・
斉藤君「俺様だぜぇ!」
俺「大丈夫?」
斉藤君「フッ・・・任せとけって。基本的にはどんな球でもいけるが、特に得意なのは速球だ。」
豪竜が一球目を投げた。ストライク。
斉藤君「なるほど・・・」
第2球、斉藤君がストライク。カットボールだ。スピードガンには160キロと表示された。
仙田監督「160キロのカットボールか。いいピッチャーだな。」
運命の3球目!
「ビュッ!」
「ゴオッ!」
斉藤君「き、きた!」
「キーン!」
球状に快音が響いた。斉藤君は喜びを隠し切れないようだ。
俺「よ、よ、よっしゃー!」
打球はレフト方向1直線。逆転ホームランだ!
占がホームイン、そして斉藤君も・・・
俺「や、やったー!」
斉藤君「ま、この俺がいれば当然かな。」
こうして・・・9回表、俺たちは6対5だった。あとは9回表を押さえれば・・・あの王者竜王高校を・・・

9回裏、俺は早いペースであっという間2者連続三振を取った。もちろん、カワサキボールで。しかし、あと一人というところで俺はカーブをヒットにされ、ツーアウト、ランナー2塁という結果になった。

俺「や、やばい・・・」
次のバッターは・・・4番、ファースト・・・そう!
アナウンス「4番、ファースト、大竜君」
最悪の結果になった。こうなることも予想していた。これだけは避けたかった。喜びと期待が一期に不安へと変わり、俺にのしかかってきた。大竜と戦うことだけは避けたかった・・・
監督がタイムを取った。みんな集まってきた。
チームメイト江川「だ、大丈夫かい?」
俺「大丈夫・・・・・・・・・・・・じゃないかも・・・・・・」
斉藤君「心配するなよ。センターには俊足、強肩の斉藤君がついているぜ。」
占「頑張って。」
仙田監督「ま、頑張れよ。」
俺「う・・・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・」
俺は元気のない返事をした。

大竜「川崎とやらよ。」
俺「何・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
大竜「お前のすべてをぶつけて来い。俺にかなうか・・・?」
俺「負けそうかも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
大竜「そうか。自分を信じるがよい。」

俺は慎重に球を選んだ。ストレート?スローボール?カーブ?スライダー?それともカワサキボール?ストレートかな。そうだな。
俺はストレートを投げた。ストライク。見逃しだ。
第二球は・・・カーブだ。これまたストライク。
さあツーストライク。周りのものがすべてゆっくりと見えたような気がした。プレッシャーがのしかかる。ラストボールは・・・

俺は3球目を投げた。俺が勝つか・・・大竜が勝つか・・・
 
「ビュッ!」

最後に選んだ球・・・もちろんカワサキボールだ。

「ククッ!」

大竜「・・・やはりそうか。」

大竜はスイングした。

「ククッ・・・」

甲子園に緊張が走った。俺はただ・・・勝ちを願うしかなかった。

「ククッ・・・・・・・・」
俺「あっ!?」
占「なっ!?」
斉藤君「うっ!?」
峯川「はっ!?」
大竜「ふっ・・・」
仙田監督「・・・・・・・・・・・・・・・・・また今度・・・か。。」
「キーーーーーーーーーーーン!!!!!」

勝利の女神が俺たちに微笑むことは・・・・・・・・・・無かった。

 

 

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