第七十五話 再ピンチ

 

俺は再び三塁を見た。
相変わらず三塁ランナーの嶋は俺のほうを見つめている。
俺はキャッチャーのほうを見る。
そして、サインにうなずく。
緒方は少し大きく息を吸う。
俺はセットポジションから第1球、投げる!
「ビュッ!」
「バンッ!」
審判「ストラーイク!」

俺は再びピンチを迎えていた。
6回、俺は先頭バッター嶋にヒットを打たれてしまう。
その後、小山田に送りバントを決められ、3番シーツはファーストゴロで打ち取ったものの、二塁ランナーの嶋はその間に三塁に進む。

そして、次のバッターは4番打者・・・


仙田監督「・・・緒方か。」
ベンチで監督が言う。
阿部「ここで1点でも打たれてしまうと・・・勝利は難しいと・・・」
隣にいるのはマリ○ボールでベンチ入り、阿部。
仙田監督「ああ・・・さっきはなんとか3点取れたが、小山田から再び点を取るのは難しいだろう。それに新たに永川とかいう好投手がいると聞いたからな・・・ここで点をとられるとかなり苦しい。」
阿部「・・・」
仙田監督「それに、川崎はスタミナがあまりない・・・もし、1点でも入れられたとしても、延長戦にもっていかれれば・・・」
阿部「と、言う事は・・・そろそろ先輩のあの球の出番ですか?」
仙田監督「ああ。そうだな。」


俺は息を大きく吸った。
ストライクか・・・
と、タイムがかかった。伝令が走ってくる。
伝令「すいません、監督から伝言です。」
内野陣全員が伝令の話に神経を集中した。
伝令「えっと、監督が言うには、川崎先輩、そろそろアレを投げていい・・・とのことです。」
俺「・・・オッケー。」
伝令「・・・やばかったら四球覚悟でボール球で勝負しろと・・・」
俺「分かった。」
俺は再び緒方のほうを見た。
アレを使うのか・・・

伝令「あ、後一つ。」
再び俺は伝令に目を向けた。
占「まだあるのかい?」
伝令「ええ・・・なんというか、監督が、小山田の弱点が分かったから、気楽に行けと・・・」
俺「・・・えっ?」
占「じゃ、弱点が分かった!?」
青木「!?」
伝令「それだけです。」
俺「・・・分かった。」
そういうと、伝令はベンチに戻っていった。
俺「・・・」
芳川「・・・さて、どうする?」
俺「とりあえず、アレをつかっていく。」
芳川「オッケー。」
占「弱点が分かったって、ホントかな・・・」
峯川「・・・ま、監督のことでっから、きっと何かあてがあるんですやろ。」
俺「・・・そうだね。」
青木「・・・とりあえず、楽に行けって事でしょう。」
占「そうだな。よし、ここを抜ければ勝機が見えてくる!頑張るぞー!」
残りの6人「オオーッ!」


阿部「そういえば監督、伝令に弱点が見つかったって言ってましたけど、何でですか?」
仙田監督「ああ・・・川崎のさっきのカーブな、あきらかに威力が落ちていた・・・」
阿部「え、そうですか・・・?」
仙田監督「ああ。多分、川崎がプレッシャーに押されているんだと思う。」
阿部「・・・もしヒットを打たれれば、もう逆転は難しいところですからね・・・プレッシャーに押されるのも納得できます。」
仙田監督「・・・あんな球、緒方ならすぐに打てるからな。少しでもプレッシャーを和らげておかないといけない、と思ってな。」
阿部「・・・ということは、弱点はまだ分からないんですね・・・」
仙田監督「・・・えーっと、次の回は誰から始まるんだっけ?」
阿部「・・・」


俺はロージンバックにに手をつける。
芳川のサインは・・・外角低めへのスライダー。
俺はゆっくりサインにうなずいた。
第2球、投げる!
「ビュッ!」
「ククッ!」
「バンッ!」
審判「ストラーイク!」
第2球もストライク。
第3球は高めにはずしてボール。
第4球もはずす。ボール。
これでカウントは2−2。
そして、ようやくあのサインが出た。
俺はサインにうなずく。
セットポジションから第5球を投げた!

「ビュッ!」
緒方「来たか、あの球!」
カワサキボールは上下左右、ジグザグに曲がる!
緒方もボールを当てに行く!

「・・・カンッ・・・」
俺「!」
仙田監督「!」
峯川「!」
占「!」
斉藤君「!」
青木「!」

ボールはバットの先に当たった。
打球は力なくファーストフライに。
松村はしっかりキャッチ、スリーアウト。

俺「・・・」
俺はマウンドで驚いていた。
・・・確かに、春、カワサキボールは打たれた。
しかし、それは王者、竜王の四番打者、大竜だから出来るものだと思っていた。
たしかに、緒方もすごい。すごいのだが・・・

まさか、ここまで、ここまで、カワサキボールが打たれるようなバッターになるとは。

緒方「川崎!」
俺は緒方のほうを向いた。
俺「・・・?」
緒方「・・・次は打たせてもらおう。」
そういうと、緒方はベンチに戻っていった。


なんとかこの回、ピンチを切り抜けられた。


しかし、
仙田監督「まさか、カワサキボールを当てられるとは・・・!」

 

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