第七十六話 打倒小山田

 

7回表、次は9番バッターの松村からの攻撃。
その前に・・・
俺「・・・監督、それで小山田の弱点ってなんですか?」
仙田監督「・・・え?」
斉藤「監督、さっき小山田の弱点が分かったって・・・」
仙田監督「そ、そんなこと言ったか?」
占「・・・え、だって伝令が・・・」
仙田監督「おい、山村!お前、伝え間違えたんじゃないのか!」
伝令のほうを向き、仙田監督は叫んだ。
山村伝令「ええ、だって監督、ちゃんと弱点が分かったって言ってたじゃないですか・・・」
仙田監督「うるさい!」
俺「・・・じゃ、分からなかったんですね・・・」
仙田監督「そ、そんなことないぞ!い、いいか。何故、小山田がストライクゾーンにしかボールを投げてこないか分かるか!」
峯川「・・・なんでって言われましても・・・」
青木「・・・あ、もしかして・・・体力が無いから・・・」
仙田監督「・・・そ、そうだ、その通り!小山田には体力が無い、と私はにらんだ。そこだ。そこをついていけ。分かったな、松村、とにかく粘れ。粘って粘って粘りまくれ。小山田の変化球は高速ボールが多いから、カットするのは比較的簡単なはず。皆、今こそ『納豆ねばねーば練習』の効力を見せ付けてやれ!」
全員「はいっ!」
アナウンス「9番、ファースト、松村君。」
松村がゆっくりとバッターボックスに立つ。
小山田はサインの確認をし終わると、モーションに入った。

その後、松村は1球、2球は見逃しでツーストライクとすると、そこから5球、ファールを続けたが、次のストレートを空振。三振。


「キィン!」
審判「ファールボール!」
占は小山田の投じた第8球目をカットした。
「ビュッ!」
「キィン!」
審判「ファールボール!」
9球目も右方向に流し、ファールボール。
小山田(・・・くそっ、まさか俺の弱点に気付きやがったか・・・?)
小山田はサインを確認しながら考えた。
小山田(・・・だとしたら、やばいぜ・・・)
「ビュッ!」
第10球!
「キーン!」
今度はレフト方向、フェンスに当たるファールボール。

占(・・・どのくらい粘ればいいのかな・・・?)
第11球。
「キン!」
審判「ファールボール!」
占(・・・もうちょっと粘るか・・・)

小山田「はぁ・・・はぁ・・・」
占が第14球目をファールボールにしたところで八方高校キャッチャーの石原がタイムを取り、内野手全員が集合した。
二塁手、東出「大丈夫か?小山田。」
小山田「・・・大丈夫・・・と言いたいところだが・・・」
三塁手、尾形「・・・くそ、これは完全に弱点を見抜かれたか・・・」
小山田「・・・」
そのとき、伝令が走ってきた。
伝令「先輩達、監督からの伝令です。」
全員がそちらのほうを向いた。
シーツ「ナンデスカー?」
伝令「・・・小山田先輩、永川もいるので、体力の事はもう気にせず、全力で投げてくれ、とのことです。」
小山田「・・・永川、しかしアイツは・・」
伝令「それだけです。」
一塁手、新井「了解だ。」
伝令「・・・じゃ、頑張ってくださいね。」

第15球目・・・
監督は永川がいる・・・と言ってたが、永川は・・・
とにかく、俺が出来るだけ踏ん張るしかない。
そう自分自身に言い聞かせながら、小山田はHスライダーを投げ込んだ。
「ビュッ!」
「キンッ!」
審判「ファールボール!」
小山田「・・・くそっ・・・はぁ、はぁ」
まだ粘り続ける。
これで、この回に投げた球は松村に8球、青木に11球、占に15球。合計34球もこの回に投げている。
もう小山田の体力も限界・・・
占への第16球。
サインは・・・
小山田(・・・ハイシュートか・・・)
サイドスローの右腕から、Hシュートが投げられ・・・
小山田「しまっ・・・!」
石原「!」
占「・・・これは・・・!」
ど真ん中にスローボールが向かっていく。
明らかに失投・・・
仙田監督「いまだ、占!振りぬけ!」
ベンチから身を起こし、監督が叫ぶ。
占「・・・はいっ!」
占は渾身の力を込め、失投を叩く!
「カキィンッ!」
小山田「!」
振りぬいた打球は勢いよく左中間へ飛んでいく!
そして・・・
「・・・ポトッ」
斉藤君「抜けたっ!ヒットだ!」
占は二塁へ悠々と到達。
これで二死二塁。バッターは・・・
アナウンス「川崎君。」
大きく呼吸をし、バットの握りを確かめ、空を仰ぐ。
二、三度、素振りをすると、右バッターボックスに立った。
俺「・・・打ってやるよ。必ず。」

 

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