第16話 決意、涙、感謝
次の日母さんに
俺は、すべてを話した・・・
山の中にあったことや、そこにいた人たちのこと・・・
さらに、そこで目標にしていることなど・・・
黙って、話を聞いていた母はおもむろに口を開いた
「それで、あんたはどうしたいの?」
煉矢の考えていることを、肯定も否定もする気はないといった感じで、尋ねてきた
「俺は・・・。あそこでやりたい・・・。みんなと一緒に・・・。」
俺は、素直に思いを告げた
怪我をして・・・閉じこもり気味なり・・・、母さんにも迷惑を掛けた
後ろめたい気持ちはもちろんあった・・・
だけど・・・、今は本当に野球がやりたいと思っている・・・
その気持ちを、真剣に母さんに伝えた・・・
「そう・・・。」
母さんはそれだけしか言わなかった
「かあ・・・さん・・・?」
「頑張ってきなさい。あんたの気の済むまでね・・・。」
「ありがとう・・・母さん・・・。」
俺の目に涙がにじんでいた
こんな涙・・・初めてかもしれないな・・・・
<ピーンポーン!!>
家の呼び鈴がなった
「はい?」
「宅急便です。判子お願いします。」
「あっ、はいはい。」
母さんは、判子を持ってまた出て行った
「はい、どうもごくろうさまでした。」
ガチャン!!
母さんは部屋に戻ってくるなり俺にこういった
「煉矢、あんたによ。」
「えっ?」
<御鳥 煉矢様>
その紙袋にはそれ以外何もかかれていなかった
そして、その紙袋を開けた
「ん?手紙と・・・それに・・・ユニホーム??」
俺は、その手紙に目を通した
−こんにちは。
この手紙が届く頃には、もう家には着いていると思います。
最終日にはあまりはっきりは話していなかったですが、私達はあまり知られていない、いやむしろあまり知られてはいけない団体・・・
そのこともあり、日本で活動するわけには行きません・・・。
そのことを、保護者の方とよく話し合ってください・・・。
そして、もし、ご両親の了解が得られれば1月3日に同封されているユニホームを持参の上、下記に記載されている場所に来てください
それでは、来てくれることを願っています・・・。−
「なんて、書いてあるの?」
母さんは、そういった
俺はその手紙を母さんに見せた
読み進めていくと同時に母さんの顔は少しずつ変わっていった
当然だと思った・・・
まだ俺は18・・・ただでさえ得体の知れない団体で活動するというのに、その活動が日本では出来ないというのだから・・・
「母さん・・・、やっぱり俺・・・。」
「いっといで。」
「えっ?」
「あんた、野球好きなんでしょ?頑張ってきなさい。お父さんもきっと分かってくれるから・・・。」
俺は、感謝しても仕切れないほど感謝した・・・
やっと止まっていた涙がまた溢れ出し・・・、握り締めた拳を濡らしていた
その夜、父さんにも事情を話した
父さんも、快く了解してくれた
「父さんも、母さんも行ったことのないところに、行くんだからうらやましいなぁ・・・。」
「父さん・・・。」
「まぁ、お前なら大丈夫だな。」
「うん。」
「1月3日ってと、明後日か・・・、早いな・・・。明日、桜ちゃんたちも呼んで、パーティーでもするか?」
「いいんじゃない?ね、煉矢。」
「そうだね。」
その時、俺は凄く幸せだなと思った
怪我をしたことが逆にうれしかったほどに・・・
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