第2話 俺はもう・・・
致命的な怪我を負ってから、約半年が過ぎた・・・
「そろそろ、ドラフトの時期ですねぇーー。」
「そうですねぇ、今年はどんな新人が指名されるのか楽しみです。」
煉矢は、自分の部屋で横になりテレビを見ていた
「けっ、何がドラフトだよ・・・。」
−あの日から、俺は野球との縁を切った
ボールさえ握っていない・・・。−
ピーンポーン!
家のベルが鳴った
「煉矢ー。桜ちゃんが来たわよーーー。」
「やっほー、煉矢!元気〜〜?」
なんとものんきな声である
「見りゃ分かんだろ?俺は怪我してんの!元気なわけあるか!」
入ってきた、桜にそっぽを向いたまま、煉矢は答えた
「な〜んだ、意外と元気じゃない。安心したよ。
おばさんに聞いたら、最近も全然しゃべんないって言うから心配してたのよ。」
そういって、桜はその場に座った
「で、今日は何の用?」
「何の用はないでしょぉ!?せっかく人がいいもの持ってきてあげたのに・・・。」
さすがに、煉矢の態度に怒ったようだ
「いいもの?なんだよ?」
「もういいよ。見せてあげない!」
今度は、桜がそっぽを向いてしまった
「悪かったよ、誤るからさ。見せてくれよ。」
まるで子供である
「しょぉがないわねぇ。はい!これよ。」
そういって、桜は一枚の紙を煉矢に差し出した
「何々・・・。」
{怪我、野球環境との不一致、上下関係からの退部なんかで、満足に野球ができないでいる奴ら。
もう一度野球をやってみないか?
中退した高校生から中年サラリーマンまでやる気のある奴。
もう一度、グラウンドに立ってみないか?}
「たまたま、インターネットで野球の事見てたら、出てたから印刷してきたのよ。」
桜はそういった
「桜・・・。」
「え、何?」
「悪いけど、俺はもう野球をする気はねぇよ。」
「ど、どうして・・・。」
考えもしなかった、煉矢の返答に、桜は動揺を隠せなかった
「わりぃ、まだ寝たりねぇから帰ってくれないか・・・。」
そう、冷たく言い放った
「そう、分かったよ。それじゃあ、また来るからね。」
バタン!!
桜は出て行った
悲しそうなその背中を
煉矢は見ることが出来なかった
「俺はもう、野球なんて・・・。」
足を引きずりながらベットに横になり
うつむいたままだった・・・。
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