第24話 気持ちの強さ


初球と同じくして勢いのあるストレートが相手バッターを追い込んでいた
レベルの違い、経験、そんなことを考えていればトップから二球同じ球、そして続けてストライクなど投げるものではないだろう
しかし、今の連中の考えにそんなことはインプットされてはいなかった
今ある力を信じて全力でぶつかる、ただそれだけだった

「トライーク!!バッターアウッ!!」

3球目がミットの届いたとき、主審の手が上がった

「よし!」
「ナイスピッチ!!小松さん!!」

研ぎ澄まされたようにミットに刺さるコントロール、そして全力で行きたいと言う勢い・・・
誰もが、調子良いと・・・そう思っていた

キーン!!

2番クリストファーに投じた3球目・・・
外角低めのストレート、2球目に内からからの切れ込むカーブの後の球、決して悪くはなかった

「えっ・・・。」

確実に真芯でとらえられた球は、センター方向に向かって距離を伸ばしていく

おいおい、冗談だろ!?、誰もがそう言わんとする顔で打球の行方を見ていた
センターが打球の進む先に猛然とダッシュをする

−くっ・・・、取れるかどうかは微妙って所か・・・。−

「五味!!俺は突っ込むから、フォローを頼む!!小松さんの勢いを俺達がつなぐんだ!!」
「わかった!!カバーは任せろ!!」

そんな二人の会話を尻目に打球はフェンスに向かってぐんぐん伸びていく
勢いはあったが弾道が少し低く、ホームランにはならないことは誰もがわかってはいたが、今の二人には二人にはホームランであろうがなかろうが、関係はなかった

その打球に対する姿勢を見て、今後を悟った小松は

「おい、よせ!!無理はするんじゃない!!」

そう声を張ったが、マウンドからの声はセンター牧場には届いてはいなかった

「おぉぉぉ!!」

地面を強く蹴りこみ、ヘッドスライディング状態でボールの落下点へ・・・いや、フェンスに突っ込んで行った

ダッン!!

「牧場!!」
「牧場さん!!」

フェンスにまともに激突した牧場の身体は、その場に崩れ落ちる・・・
無常にも、そのグラブにはボールは入っていなかった

「五味!!早くボールを!!牧場の気持ちを無駄にするんじゃねぇ!!」

皆が見とれている状態の中、サードから神藤の声がした
その声に我に返った五味はすぐにボールを捕球し

「その先へは行かせねぇーーーー!!!」

サードへダイレクトに返球する
その場面が、その気持ちがボールをベース上に正確に送っていく

パシッ!!
牧場の放ったボールはサードベース手前のグラブに収まり、神藤のタッチプレー持ち込まれる

−このベースは踏ませねぇ!!−

パーン!!

叩きつけたグラブはランナーの手とベースの間に入った

「アウト!!」

その一連のプレーがサード塁審の手が上がって止まった
そして、そのコールを聞くや否や、ナインは牧場の下へ向かった

「救急車だ!!救急車を早く!!!」

大きな球場とはいえ、ただの練習試合
緊急時に備えて、救急隊員のようなものが居るわけもない
ただ、そこで待つしかなかった

「救急車はまだなのか!!」

「落ち着け赤城!!ここで俺らが騒いでもどうしょうもならん!!」

「くっ・・・。」


数分後、牧場は救急車で近くの病院に運ばれた
監督は付き添うと言ったが、かすれゆく意識の中

「監督が居ないと、試合が成り立ちませんよ・・・。せっかくの名誉の負傷を没収試合だなんて、やめてくださいよね・・・。」

牧場のその言葉を聞き、その場に残った

相手のバッターも責任を感じたのか、様子を伺いに来た・・・しかし、事故ですから気にしないでください、そういって相手ベンチに返した
そして、相手監督と試合続行について話し合ったが、怪我した本人が続行してほしいと言うことで、再開されることになった

 

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