第5話 離れた世代のライバル


煉矢は、桜と分かれてから、森の中をしばらく歩いていた
もちろん闇雲にではない、誰かが通ったと思われる、草が寝ている、道ではない道を通っていた

「ったく、いったい何処に行きゃあ、いいんだ?
桜に余裕かまして、迷子になりましたじゃ、シャレになんねぇぜ・・・。」

煉矢がそういうのも無理はなく、あたりは本当にどっかの、山奥という感じであった
なんとなく、人が通った跡があったから良かったものの、何もなければ、四方八方同じ風景であった
10分ぐらい歩くと、草の間から、夕日が差し込んできていた
出発したのは昼前だったが、3,4時間バスに揺られて、すっかり夕方であった

「ちょっと、冷えてきたか・・・。」

さすがにもうすぐ冬、それに山の中ということもあってか、煉矢は少し肌寒さを感じていた
だが、徐々に道が道らしくなってきていたため、迷子になりそうだという不安はもうなかった

「おっ、もしかしてあれかな?」

200mぐらい先に、宿舎のようなものが見えた
それに、近くにはグラウンドらしきものがある
どうやら、内容はともかく嘘ではなかったとだと、煉矢は思った

「だんだん暗くなってきてるし、ちょっと急ぐか。」

そういって、少し駆け出した
近づいてくるにつれ、やはり宿舎だというのがはっきりわかってきた
あと50mかという距離に来たとき、人影が見えた

「お?あの人も野球やりに来たのかな?」

煉矢があの人というように、同年代、もしくは年下という感じはなかった
どちらかというと、大卒の体育会系という感じであった

「あのぉ・・・。」

煉矢は恐る恐る話しかけた
振り向いたその男は、やはりそんな感じであった
スポーツ刈りで、身長は180cm半ばぐらい、煉矢より少し高かった
一言で言えば、ガタイがいいというやつである

「ん?何か用か?」
「あなたも、インターネットか何かでここに来られたんですか?」
「あぁ、たまたま見つけてね。その様子だと、君もそうらしいな。」
「えぇ、僕もたまたま友人に教えてもらって・・・。」
「そうか。じゃあ、ライバルになるかもしれんな。」

「そうですね・・・、ってかここで何かやるとかそういうこと、何かご存知なんですか?」
「いや、実は俺もあまり知らなくてな、聞いた話によると、かなり前に怪我かなんかを理由にプロをクビになった選手が、考えたって話だが・・・。」
「そうなんですか・・・。」
「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は赤木 重治(あかぎ しげはる)だ。よろしく頼む。」
「僕は、御鳥 煉矢です。こちらこそよろしく。」

そんな会話をしていると、二人は宿舎の前に着いた
どこにでもあるような、普通の宿舎
木造の2階建て、どちらかというと、昔の学校みたいな雰囲気であった

「何も書いていないが、あたりにそれらしいものはないし、とりあえず入ってみるか?」
「そうですね・・・。どうせ、違っていてもここに泊めてもらうしかなさそうですし・・・。」

そうして、二人は宿舎に入っていった
入り口に来たが、誰かが出迎える様子はない・・・
宿屋とかその類ではないらしかった
電気も点いていなく、入り口の先の廊下は薄暗かった

「おい、一番奥の部屋、明るくないか?」
「そうですね、いってみましょう!!」

一番奥の明かりが灯っている、ところへ二人は向かった
だが、そこは部屋ではなかった

「ん?ここだけ金属のドア?」
「この方角だと、たぶんこの奥はグラウンドだと思いますよ。」

ガチャ!!

「おぉ!まだいたか。さぁ、こっちだ。みんな集まっているぞ。」

ドアを開けると、そこにはグラウンドが広がっていた
センターフェンスに120mの文字があった
ベンチ、照明、外野は天然芝
宿舎からは想像もつかないほど、グラウンド、というか球場である
そして、そばにいた人にそう言われ、二人は人が集まっているところに向かった


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