第8話 試合開始
「えっと・・・、こっちのチームは先攻みたいですね。」
「運がいいのか悪いのか、相手のピッチャーは神藤みたいだね。」
「あぁ、あの大学野球日本代表って言う・・・。」
「そう。彼の球は一度見たことがあるけど、やっぱり代表に選ばれるだけあって凄かったよ。」
「もち球とかは、分かったんですか?」
「確かそのときは、MAX151を記録していたね。」
「151!?、す、凄い。」
「それにくわえて、胸元をえぐるようなシュート。そして、高速からのフォーク俗に言うSFFというやつだ。」
「そんなに凄いんですか。」
煉矢の額からは、冷や汗が流れていた
そして、まじまじと神藤の投球練習を眺めていた
「なぁに、緊張してんだ?たかが練習試合じゃねぇか。負けたら、追放なんてわけじゃねぇんだ。」
そんな、緊張が目に見えて分かる煉矢に、自チームの先発にして今回の最年長小松がいった
「小松さん。」
「たしかに、やつの凄さはここにいる、いや誰もが知っていると言っても過言ではないだろう。それぐらい凄いレベルだ。
だがな、最初からそんな気持ちなら打てるもんも打てねぇし、打ち取ったあたりがヒットになっちまう。」
そう、ベンチ前で赤城とキャッチボールしている小松は言った
「そうですね。ははっ、すいません。」
「えっと、一番は誰だったかな?」
辺りを見回しながら、小松は言った
「あっ、自分です。矢原といいます。」
「矢原君か。」
「あっ、呼び捨てで結構ですよ。」
「じゃあ、矢原。お前は、やつを知っているか?」
「えぇ、一度対戦したこともあります。彼は覚えていないでしょうけどね。」
「そうなんか。いきなりで悪いが、1打席目は三振覚悟で持ち球の確認をしてくれるか?」
「分かりました。」
そんな話をしていると・・・、
「じゃあ、試合を開始する!!全員集合だ!!」
そして、最初に試合をするにチームが集合し、試合が開始した
「じゃあ、さっき言ったとおりにたのむぞ。矢原。」
「分かりました。」
<一番、ファースト矢原・・・。>
−また、お前と対戦するとは思っても見なかったよ・・・。−
初球は外角にあまめのストレート
2球目は、シュートをはずし
3球目はインローに厳しいストレートが決まって、2−1と追い込まれた
−これじゃあ、変化球はシュートしか投げていない。少しねばらねぇとな・・・。−
矢原の構えが少し変わった
スクエアスタンスの基本的な構えから、少し足を外に開きオープンに構えた
「なるほど・・・、粘っていこうってことか・・・。」
「あの構え・・・、どっかで見たことがあるような・・・。」
「なんだ坊主、矢原を知ってるか?」
「いや、見たことあるかなぁ?って思っただけです。」
「そうか・・・。」
二人が話している間に矢原は
4球目インハイにストレートがはずれ
5球目アウトローのストレートをカット
6球目の真ん中低めSFFで三振という形で、帰ってきていた
「やはり、シュートとSFFは健在のようです。真っ直ぐにもまだまだ余力があると言う感じでした。」
「そうか、ありがとう・・・。」
二番の竹下も、矢原と同じくSFFにやられ、ベンチに下がっていた
「僕は、初めてSFFを体験しましたがやはりあのたまには、苦戦させられそうですね。」
「やはりそうらしいな・・・。」
小松は少し先が思いやられると言う感じだった
だが、それを見ていた赤城が自信ありげにこういった
「たぶん、大丈夫ですよ。次の広瀬はね。」
「赤城は知り合いなのか?」
「えぇ、同期です。大学時代のね。やつの打撃センス、特にバットにボールを当てることにかけたらプロ並みといっても過言ではないですから。」
「それは期待できそうだな。」
そして、広瀬はバッターボックスに立つ
−高砂大エース・・・、いや、アマチュア界ナンバーワンエース神藤 明道。こんなところで勝負できるとは思ってなかったぜ。
なぜ、お前がプロ入りしなかったのかは知らないが、プロ入りするという夢を見るためには、絶好のチャンスともいえるかな・・・。−
初球・・・、140キロ代半ばのストレートが外角低めに・・・
キーン!!
「よし、いったか!?」
「ファール!!」
弾丸ライナーでスタンドインした打球だったが、わずか数メートル、レフトのポールの左を通過した
「おっしーい!!」
「あとちょっと、右だったらなぁ・・・。」
−少し、振り遅れたか・・・。今のを放り込んでおきたかったぜ、なんせやつにはまだあれがあるからなぁ・・・。−
そして、2球目は外角にSFFがはずれ
ストレートがインハイに決まり、2−1というかたちになる
−ちっ、こんなカウントじゃあ・・・。思いっきり振りにいくわけにはいかねぇか・・。−
「おっ、少し構えを小さくしたか・・・。」
「あの構えになれば、広瀬に三振はありませんよ。」
そして4球目
ど真ん中に、失投とも思われる球が来た
−これは失投か!?−
「もらったーーー!!」
ククッ!!
「なに!?」
ガキ!!
ミート直前で、変化したと思われるそのボールは、バットの根元に当たり3塁側のファール線を転々と転がっている
冷静に相手チームのサードは、ゴロを処理し、チェンジとなった
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